(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「輪廻は斬りつける(再)」芝居流通センターデス電所

第三舞台からの影響を少しもマイナスだと思わないわたしにとって、昨年の「夕景殺伐メロウ」は実に琴線に触れてくる作品で、歌あり踊りありギャグありの下世話さ込みでデス電所は要マークの劇団という位置づけになった。しかしながら、5年前の作品の再演となる今回の「輪廻は斬りつける(再)」は、大丈夫かなこれって不安がわいてきて。期待値の高さもあるのだろうが、この出来映えはちょっと…、うーむ。
どれをメインと紹介すべきか迷うほどに、いくつもの物語がパラレルに語られていく。消えた女子高校生と彼女の行方を追う刑事たち。何もない工場に雇われた記憶喪失の少女は工場長に出世してヘリコプターを製作することに。くしゃみをすると人の前世と後世が見える不思議な能力を持った少年は演歌歌手として芸能界にデビューする。ほかにも、売れない漫才コンビそら豆兄弟や見えない剣を操るヤクザとその兄貴分など、めまぐるしく入り乱れての展開していく。
ナレーションを映像で見せる演出が、実は重要な伏線になっている。ドラマ内ドラマが新興宗教のテロ行動で一応のクライマックスとなったのち、語り手の正体が明らかにされるのだが、その展開にちっともカタルシスが感じられないのが、個人的には致命的だった。幕切れの全員による合唱は、なかなか胸に迫るものがあったが、真のクライマックスとしては力及ばずの感で、やはり物足りない。
この中途半端さは、実は後半の物語の収束過程にもあって、前半に大きく広げてみせた風呂敷をたたみ切れないもどかしさばかりが目だってしまった。山村涼子の長台詞は、それなりに力を感じさせるものではあるけれども、それだけで物語全体を総括しきれてはいない。やはり、脚本、演出に工夫がないことの罪は大きいと見た。
前回はフロックであったか、という不安が頭をよぎったりもする。次の東京公演は1月のザ・スズナリ。進歩のない客いじりに精を出して場合じゃない、と本当に心配になる公演だった。(120分)

■データ
前説で劇団衛星、スクエア、ニットキャップシアターを東京でも暖かく迎えたくなったソワレ/下北沢ザ・スズナリ
作・演出/竹内佑
出演/豊田真吾、山村涼子、田嶋杏子、丸山英彦、福田靖久、米田晋平、松下隆、竹内佑、北村守(スクエア)、岡部尚子(空晴)、ごまのはえ(ニットキャップシアター)、紙本明子(劇団衛星)、根田あつひろ
作曲・演奏/和田俊輔