(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「箱」箱庭円舞曲focus#1

まずは、お詫び。「7月に観たい芝居」に、箱庭円舞曲の今回の演目を、ワールドSFコン(@パシフィコ横浜)のSFドラマシアターでやる演目と書いたのは、間違いでした。ごめんなさい。あちらは、「他人の気持ちがわかりません」という別の作品。
さて、箱庭円舞曲は、2000年、当時日本大学芸術学部に在学していた古川貴義が中心となって、学内や高校時代の後輩に声をかけて旗揚げ。近年は「シュールなリアリズム」を掲げて公演を行っている。今回の「箱」は、劇団名の文字からお題拝借の番外公演の第一弾にあたるとのこと。
オフィスと音楽スタジオが同居するビル。オフィスは不動産会社で、倉庫もある。音楽スタジオでは、結成されたばかりの3ピースのバンドが活動を開始。一方、会社の庶務課には新しい派遣社員が入り、倉庫ではアルバイトが小箱を見張っているだけという奇妙な仕事をいいつけられている。
しかし、やがてスタジオに出入りしていた3ピースのバンドは解散の危機に晒され、庶務課では社員と新しい派遣社員の地位が逆転してしまう。アルバイトが見張っていた小箱の中身が覗かれてしまったことが、まるでこのビルに厄事をもたらしたかのように。
場面のひとつひとつはそこそこ面白いのに、それが繋がっていかないもどかしさがある。内側と外側のある箱がひとつのモチーフであり、それが人間に喩えられていることはチラシのコメントなどから推察されるのだが、劇中から具体的に伝わってくるものが残念ながら何もなかった。ロックバンド、不動産会社それぞれのエピソードがどう絡むのかも、ちんぷんかんぷん。
クライマックスにおいては、役者たちが「大変だ、大変だ」と言ってるだけで、すっかりおいてきぼりを喰った気分にさせられた。観客(つまりわたし)の理解力に問題があるにしても、もう少し手がかりを出してほしいところだ。役者のレベルが高そうに見えただけに、余計にそのあたりが惜しまれる。(90分)

■データ
雷鳴がとどろくマチネ/渋谷Gallery LE DECO 5F
7・24〜7・29
脚本・演出/古川貴義
出演/五十嵐祭旅、山内翔、棚橋建太、小野哲史、須貝英、片桐はづき、太田みち、小松留美 、野口雄介(神様プロデュース)
照明/工藤雅弘(Fantasista?ish) 音響/岡田 悠(Sound Cube) メイク/衣裳/箱庭箱 演出助手/五十嵐祭旅 制作協力/笠井秀敏