(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「mrs,mr.japanease」小指値

2004年に、多摩美術大学出身のメンバーによって旗揚げ。その多彩でゲリラ的ともいいたくなるような公演活動がなんとも楽しげな小指値。しかし、気がつくと終わっていたり、公演期間がものすごく限定されていたりで、なかなか見ることができず、わたしは今回がようやく初見である。
渋谷で待ち合わせて、久しぶりに顔を合わせた四人の男女。高校卒業からさほど時間は過ぎていないのに、結婚して、出産間近という女の子もいて、いつの間にか互いに距離ができている。それでも酒を呑みながら話をするうちに、懐かしい出来事も思い出されてきたりして、それぞれに過去を反芻する四人。しかし、呑み会が終わればやがて今の自分に戻っていかざるをえないわけで。
パフォーマンス性が強いことは予測できたものの、そこに絡む物語性が意外と濃密なのに意表をつかれた。高校時代の回想を、それぞれが体を使って表現していくくだりが新鮮で、ダンスの場面も非常にナチュラル。シンプルだけれども、とても力強い舞台づくりがなされている。
四人の話に、さらに未来から来た少女のエピソードが絡むのだけれど、ここがいまひとつ。いささか強引なのは止むなしとしても、物語の流れから浮いてしまっていると思う。後半の展開のキーパースンだけに、もう少し工夫がほしかった。
現在の自分に帰った四人が、それぞれの日常に戻る場面が秀逸。主婦の退屈な日々や、故郷の母親と電話で話す場面には、強く惹きつけられるものがあった。
それにしても、若い世代の思いをビビッドに描く手腕と、その表現手段のオリジナリティには感服。しばらくおっかけてみたい若手カンパニーだ。(85分)

■データ
ハイバイと東京デスロックの上映会も付いたお得なマチネ/王子小劇場
7・25〜7・30
演出/北川陽子 ドラマドクター/篠田千明
出演/天野史朗、大道寺梨乃、中林舞、野上絹代、山崎皓司、NAGY OLGA
美術/佐々木文美 衣装/藤谷香子 照明/上田剛 音響/篠田千明 振付/野上絹代 調理/山崎皓司 宣伝美術/天野史朗 写真/加藤和也 製作/辻村優子、山本ゆい(mon) 舞台監督/山本ゆい(mon)