(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「小さなお茶会。」空想組曲VOL.3

「ものがたるものがたり」を掲げる空想組曲は、劇団こってりを主宰し、G-upプロデュース作品などでも活躍するほさかようを中心に結成されたユニット。ほさか氏については、コアなミステリ劇らしい「金魚鉢の中で」をいつか観たいと思っているわたしだが、まずは初見の本公演でお手並み拝見といきたいところだ。
街中で、まるで男の子をナンパするように高校生(松崎史也)に声をかけ、誘拐と称して連れまわす謎の女性(古市海見子)。事件を知った少年の母(中谷千絵)は、心配のあまりパニック状態に陥り、弟(飯島俊介)を引き連れ、犯人との交渉現場にやってくるが。
一方、あまり流行っていない喫茶店での人間模様。憧れのウェイトレス園美(生井景子)を目当てに通いつめる亀山(堀池直毅)をけしかけ、園美に告白させようとする店主(中田顕史郎)と店員(森下亮)。そこに学校の先輩みどり(紫村朋子)も加わり、臆病で煮え切らない亀山の背中を押すが。この両方が、混ざり合うように交錯し、事態はてんやわんやの状態に。
往々にして、世の中には裏と表、日常と非日常が存在する。誤解や思い込みなどは茶飯の事で、自分が見たり、感じたりすることが、物事のすべてではないことは言うまでもない。お話は、そんないくつかの物事のうら側や、人物の心の内奥を伏せたまま、進められていく。
本作の本領は、そんな裏返しに並べられたカードが、本当の絵柄を次々明かしていく後半で、アブノーマルな恋愛関係や、秘めたる恋心、さらには、亡き妻に変らぬ思いを捧げる一途な思いや、親子関係をめぐる綾などが、次々と像を結んでいく。途中に何箇所かあった違和感を抱かせる場面を思い起こし、それらが巧妙な伏線であったことを思い起こさせるカタルシスも素晴らしい。
ただ、惜しむらくは、凝った舞台装置がうまく機能していないことで、舞台下手の席からは人物がかぶったり、見にくい場面が多かった。縦横に並べた座席の配置は凝ったものだが、もう少し配慮がほしいところだ。もうひとつ、初日ということもあったのだろうが、証明や音響のオペレーションが不安定だった。効果音などが重要な芝居だけに、ミスが惜しまれる。(120分)※17日まで。

■データ
初日ソワレ/王子小劇場
7・13〜7・17
作・演出/ほさかよう
出演/堀池直毅(少年社中)、生井景子(DMF)、森下亮(クロムモリブデン)、金崎敬江(bird's-eye view)、中谷千絵(天然工房)、古市海見子(メタリック農家)、紫村朋子、松崎史也(エレキ隊)、飯島俊介、中田顕史郎