(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「たいくつな女の日」蜻蛉玉第14回公演

会場は、JR新宿駅南口に近いスペースゼロのほぼ裏側に位置する人形劇団プークのホームグラウンド。そこの地下に、こじんまりとした劇場がある。ベンチ型の座席は、前後の幅がいかにも子どもの体型向けで、大のおとなにはちょっと窮屈だけれども、劇場空間にはそこはかとないファンタスティックな雰囲気がある。なるほど、蜻蛉玉が公演場所としてここを選んだ(今回が2度目)のも、なんとなく頷ける。
無数のフロアーのようなものからなる世界を、螺旋階段で登り降りする女性たちの物語。それぞれのフロアーで暮らす者の中には、来訪者を引きとめようとする者もいれば、一緒に旅に出ようとする者もいる。男のいるフロアーもあるが、男は種の保存という本能にとりつかれたデク人形のようだ。昇りつめたらゴールはあるのか、それとも居心地のいい場所に留まるのが正解なのか、それは判らない。女たちは、螺旋階段の旅を続ける。
明確な答がないことも含めて、物語が社会における居場所と、その選択をテーマにしていることは察せられる。具体的には判らないのだが、彼女たちにとって必要不可欠なものとして、水が使われている。さまざまな役を演じ分ける役者もいて、人生における選択肢がほぼ無限にあることや、環境などによって人はさまざまな形に変化しうると言っているようにも思える。
頻出する隠喩がいささか捉えどころなく、漠然とし過ぎていることや、全体の単調さもあって、退屈をおぼえたりもするのだが、思わせぶりな台詞にはっとさせられる場面も多し。舞台上手にすらりと伸びる螺旋階段を、実に巧みに使っている。わたしが観た過去2回は、島林愛のチェルフィッチュを思わせる前説があったが、今回はそれがなく、寂しく思えた。(75分)※17日まで。

■データ
マチネ/代々木プーク人形劇場
7・13〜7・17
作・演出/島林愛
出演/打田智春、神林裕美、北村延子、安村典久、伊藤羊子、熊埜御堂彩、坂本絢、シトミマモル、墨井鯨子、武田力、島林愛
舞台監督/藤本志穂(うなぎ計画) 舞台美術/松村知慧(青年団) 照明/富山貴之