(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「crossing / program-A おやすまなさい」風琴工房 PRESENTS

今年から来年にかけて風琴工房が取り組んでいる3つのプロジェクトのひとつ「crossing」。(他の二つは、「砂漠の音階」の再演と新作「hg」の上演)劇団の役者たちが、座付の詩森ロバ以外の作品に取り組む試みだが、演出家や役者ばかりでなく、洞窟のように狭く閉ざされた空間で観客までをも濃密な世界に巻き込んでの公演というのが、いかにも彼ららしい試みだ。その最初のプログラムは前田司郎の作品で、五反田団で上演されたこともある。
おそらくは夜半過ぎ、ふたりの若い女性がひとつの部屋で。女1(宮嶋美子)は、眠れないので相方の女2(松岡洋子)にしきりに話しかける。しかし、床に横になる女2の方は無性に眠くて、ややもすると対応もいい加減なものになりがち。相手が眠いのを知りつつ、喋るのを止めることができない女が、寂しさにあかせて次々と浮かぶ関連のない話題で、もう一方の女を眠らせない。かくして、女たちの夜は更けていく。
いくつかの小さな小道具だけば散りばめられた空間。コンクリートの床に、ほぼ下着姿で横たわる松岡は、寝返りの姿も悩ましい。一方、宮嶋も途中で上に着ていたものを脱ぎ捨ててしまう。その漂うエロティシズムに酩酊させられるのは、男性ばかりではないだろう。
ダイアログだけで構成された芝居ということもあって、提出されるイメージは断片的だが、すぐ隣り合わせには死の色合いもあって、そこはかとない夜という異世界が背景にちらつくあたりは、物語としてとてつもない怖さもある。二人の女性の関係をめぐって、姉妹?友人?恋人?と想像が頭の中を次々と彷徨う面白さもあった。(50分)

■データ
初日13時の回/駒込La grotte
6・16〜6・17
作/前田司郎(五反田団) 演出/詩森ろば
出演/松岡洋子、宮嶋美子