(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「スピンオフ」マシンガンデニーロ

マシンガンデニーロは、脚本と演出を担当する間拓哉と、松崎映子、菊池豪の二人の役者で結成された演劇ユニット。2005年旗揚げなのでまだキャリアは浅いが、客演の役者を重視したプロデュース形式での公演を重ね、今回の「スピンオフ」がその第4回にあたる。
おそらくはパラレルワールドか近未来。階級性社会が急激に進み、舞台となる炭鉱でも、経営者レベル、管理者レベル、労働者レベルとはっきり境界線が引かれている。今日も今日とて強制労働に近い形で、労働者たちは管理者の横暴に耐えながら、石炭を掘り続けている。そんな中でたったひとり、管理者の暴力も進んで受け入れ、いつも元気な女性がミケ(松崎映子)がいた。
ある日、炭鉱からの脱走を支援する組織から送り込まれてきたという新入りのタマ(中村麗華)がやってきた。彼女によれば、失敗したと伝えられていた先般の脱走計画が、実は成功していたのだという。彼女がこっそり持ち込んだパソコンに送られてくる秘密の脱出口についての情報を頼りに、ミケを中心に労働者たちは、脱出計画に夢をかけるが。
語るべき物語の語り方を模索するもどかしさは否めないところだが、炭鉱というアイデアや、映画の「大脱出」とのシンクロなど、狙いとしては決して悪くない。ただ、物語を誠実に語ろうとするあまり、単調になる点には注意を促したい。それと、長すぎるのも、今の実力ではちょっと辛さが先にたってしまう。
役者では、やはりフロントの松崎映子に華があるのがいい。彼女以外の役者たちも、熱気が伝わってくる芝居ぶりに、好感度が高い。現状では発展途上の未熟さが先にたつが、これからの成長を見守りたい若手劇団だ。(130分)

■データ
初日ソワレ/大塚萬劇場
6・14〜6・17
作・演出/間拓哉
キャスト/松崎映子、菊池豪、伊藤らら(FIRE☆WORKS)、伊奈稔勝(Theatre劇団子)、齋藤了介、三瓶大介(ククルカン)、土田裕之、中村貴子、中村麗香(DMF)、船木美佳(N.A.C)、前田優次
舞台監督/秋尾雄輝 舞台美術/袴田長武(ハカマ団) 照明/河上賢一(La Sens) 音響/熊脇直介 衣装/goemon