(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「Nf3 Nf6」SUN-MALLSTUDIO Produce公演

社会派をも視野におさめ、シリアスなテーマに積極的に取り組むパラドックス定数のレパートリーを、個性的な役者を起用し、サンモールスタジオ代表の佐山泰三が演出するプロデュース公演。配役違いの2セットがあり、わたしはtsumazuki no ishiの寺十吾に惹かれてBバージョンに足を運んだ。(ちなみに、Aバージョンは劇団上田の江戸川卍丸とホチキスの加藤敦)
戦局が風雲急を告げる二次世界大戦下のヨーロッパ。ユダヤ強制収容所を舞台に、ナチスの将校(寺十吾)とユダヤ人数学者(今里真)が、チェスの対局を通じ、議論の火花を散らす。かつての友人だったふたりのやりとりからは、過去、そしてエニグマ暗号解読の秘密が浮かび上がり。
立ち上がりの10分がわたしには致命的で、役者の声が通らないことや、シチュエーションが掴めないことから、舞台に乗り切れなかった。会話劇は、次第に熱が篭ったものになっていくのだけれど、それにつけても最初の躓きが残念。音響、照明ともに凝ったもので、雰囲気を大いに盛り上げるのだが。
達者な寺十吾も台詞をかむ場面がしばしばあって、準備不足なのかなと思ったりもする。開演直前に座席の配置を変えたりするバタバタも、ちょっとどうかと思う。短いが密度の高い芝居に観客を導くということに、もう少し神経を使ってほしい。不調の寺十吾は、後半持ち前の存在感を発揮するし、相方の今里真も悪くなかっただけに、惜しい。(75分)

■データ
初日ソワレ/新宿サンモールスタジオ
6・13〜6・17
作/野木萌葱 (パラドックス定数) 演出/佐山泰三(サンモールスタジオ) 
出演/寺十吾(tsumazuki no ishi)、今里真(劇団2〜3人)