(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「グレイトフル・デッド」バジリコFバジオ

所属女優の田中あつこの客演をあちこちで見かけるバジリコFバジオ。作・演出は佐々木充郭で、舞台に人形が数多く登場することでもお馴染み。旗揚げは2002年あたりと思われ、ENBUゼミの卒業生が中心メンバーに多い。今回のタイトルは、アメリカの伝説的なジャムバンドから連想したものらしいが、内容的にはまったく関係ないようだ。
遺産相続の話が持ち上がり、婚約者の鵺子(木下実香)を伴い故郷の猫舌村に舞い戻った元推理小説家の土倉(上野雅史)。しかし、二人の到着を待ち受けていたかのように、当主の猫舌虎弥(玉川晋吾)が死亡する。普通の病死かと思われたが、これは殺人事件だと言い張り、惨劇の幕開けだと断定する鵺子。彼女は、あらゆる推理小説を読破した推理小説マニアで、火のないところに煙をたてる厄介な素人探偵だったのだ。
事件のないところに事件を見出し、独善的な推理を繰り広げ、ひとりで暴走していく。そんな百鬼園鵺子のキャラクターが、非常に面白い。やや一本調子のきらいはあるけれど、木下美香がかしましく演じる鵺子役はエネルギッシュで、物語を加速させていく。
ただし、彼女が退くと、とたんに覇気がなくなる。さらに終盤にかけては、悪戯に複雑になったお話が混沌としてきて、わたしはついていけなくなった。プロットに、まだまだ工夫と整理が必要だと思う。ただ、最後のオチは、アンチ・ミステリとしてお見事。
鵺子ものは、シリーズ化したら面白いんじゃないでしょうか。(100分)

■データ
初日ソワレ/しもきた空間リバティ
5・18〜5・21
作・演出/佐々木充郭 
出演/木下実香、武田諭、樋山剛一、田中あつこ、三枝貴志、百地香織、上野雅史(!OJOi)、古市海見子(メタリック農家)、中込恭史、玉川晋吾、渡辺哲、亀岡孝洋(カムカムミニキーナ)
舞台監督/中西隆雄 舞台美術/稲田美智子 照明/今西恵理(LEPUS) 音響/筧良太(SoundCube) 宣伝美術/木下実香