(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「ツグノフの森」G2 Produce & 三鷹市芸術文化センター Presents

日本全土を襲った大地震により、横にスライドするような地殻変動が起き、土地がランダムに移動するという現象が日本各地で発生。自治体間では土地をめぐって争いが起き、国内のあちこちで内戦状態になっている。
その巨大な森も、そのときに出来上がった。森の中心付近にあるアトリエが舞台で、画家(片桐仁)は、あの日以来眠ったままの恋人(水野顕子)を見守る日々を送っている。彼と暮らすのは、謎の居候(福田転球)で、彼は見えない動物を飼っている。白い絵の具しか使わなくなった画家に対し、彼の作品を買い付けにきたやくざの使い(坂田聡)は困惑する。ある日、兵士(久ヶ沢徹)が捕虜を見つけたといって、その身柄を画家に預けにやってくる。2人の男女は、父親の死体を捜しにきた姉(岩橋道子)と弟(杉浦理史)だった。
さほど観ているわけではないが、これまで観たG2作品の中では、もっとも楽しめた。ユーモアを小気味よく散りばめてあるが、内容は意外とシリアス。画家と眠れる美女の愛の物語と見せかけておいて、中盤あたりからどんどん別の方向にシフトしていく。居候の過去のエピソードが、最初は突拍子もなく、不可解な断片だが、次第に輪郭が見えてきて、最後は物語全体のミッシングピースを埋めてしまう。絵柄が完成していくくだりの感動は、なかなかのもの。
役者のレベルが高く、ほぼ全員が強力な個性を発揮している。片桐と坂田は、最初から丁々発止だし、福田転球も難しいキャラクターを楽々演じているし、久ヶ沢の不思議な存在感も不気味だ。水野の蓮っ葉で傍若無人な女の子キャラも期待どおりだったが、初めてみる岩橋道子の次第に存在感を濃くしていく熱演も、素晴らしいと思った。
ただ、舞台化までされた「となり町戦争」という先例があることを考えると、町同志の戦争というアイデアは、わざわざ使わなくてもよかったのではないか。そもそも戦争なしでも、この物語は成立すると思うのだが。なお、タイトルの「ツグノフ」は「償ふ」とのこと。(120分)

■データ
マチネ/三鷹市芸術文化センター星のホール
5・18〜6・3(東京公演)
作・演出/G2
出演/片桐仁ラーメンズ)、坂田聡福田転球、杉浦理史(bird's-eye view)、権藤昌弘(飛ぶ劇場)、水野顕子(アーノルド)、岩橋道子(ラッパ屋)、久ヶ沢徹