(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「感じわる大陸」シャトナー研

喰わず嫌いにも困ったもので、当時リアルタイムで芝居にのめりこんでいた筈なのに、惑星ピスタチオ(1990年-2000年)は、一度も観ていない。正直、後悔しています。というわけで、西田シャトナーの巨漢を初めて見たのは、昨年の七里ガ浜オールスターズへのゲスト出演で、大きながたいで繊細な芝居をするのに、ちょっと感心した。急に告知されたこの公演は、数年前から演劇活動を本格的に再開した西田が、東京で主催する芝居としては6年ぶりとのこと。
大航海時代コロンブスがアメリカ大陸を発見した史実に寄り添うエピソード。船団のうちのサンタマリア号が座礁したために、一行は一端帰還することとなったが、船の定員からイスパニョーラ島に残されることとなった乗組員たちの苦難の日々がテーマ。数ヵ月後には戻るとコロンブスは約束したが、彼が再びこの地に戻ったのは、ほぼ1年後のことで、残された乗組員はすでに全員が死亡していたという。
ギターの弾き語りでひき語り風の西田の前説によれば、台詞のない脚本をもとに、出演者のインプロビゼーションで舞台を作るとのこと。公式ステートメントによれば、台詞の9割が日替わりだとのこと。真偽のほどは定かではないが、それほど一瞬一瞬のやりとりで、真剣勝負をやりますよ、という意気込みなのだろう。
そして、そんな緊張感は、今回の芝居で有効に機能しているように思った。順繰りにスポットが当たる展開がやたら多いような気もするが、それはインプロビゼーションを成り立たせるための最低のルールのようなものだろう。わたしが観た初日は、危ない一幕もあったように思えたが、そこは西田が無難にフォローし、話の流れは最後まで澱むところがなかった。(蛇足ながら、舞台後方のタイムキーパーはダミーか。あまり機能しているようには見えなかったが)
紅一点の小島愛に愛のツッコミを幾度となくくれていた西田シャトナーだが、しかし、達者な役者を集めましたね。時間堂絡みで最近良く見かける中田顕史郎も、いつもと一味違うおとぼけぶりで好演。噂の保村大和を観ることができたのも収穫でした。(120分)

■データ
初日ソワレ/新宿THEATER/TOPS
5・17〜5・22
作・演出/西田シャトナー
出演/保村大和原田篤、村木藤志郎(うわの空・藤志郎一座)、谷口賢志、花見卓哉(レッドキング)、小島愛岩崎宇内、中田顕史郎、西田シャトナー
日替わりゲスト/大隈啓誉(シャカ)
ヴァイオリン演奏/マヤ・フレーザー