(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

Hula-Hooperの、部活動 『鱈。』の(ふ)

若い人はいいなぁ、無限の可能性があって、とはよくいうけど、それはわたしのような年寄りの言い草だろう。当人たちは当人たちなりに、焦りもあるだろうし、余裕だってないに違いない。一昨年の〝ニセS高原から〟のプロジェクトにも参加していた若手のホープのひとり、菊川朝子の頑張り具合を見ていると、そう思えてしょうがない。昨年は、七里ガ浜オールスターズへの客演で好演したし、主宰するHula-Hppperの本公演でもいい芝居を仕立て上げてみせた。若さと未熟さもあるけれども、目が離せない存在のひとりだ。
その彼女が、課外活動に位置づけて行う本公演は、渋谷のライブハウスを借り切って、贔屓のミュージシャンをゲストで呼んだり、自らがウェイトレスに扮して飲み物や食事のサービスをしたりという遊び心の要素がたっぷりある。しかし、その実、ちょっと引いて全体を眺めてみれば、演劇的にもなかなか面白い試みにチャレンジしている。
実は、開演前にウェイトレスになりきり、お客たちのオーダーに応えている彼女たちは、やがて始まる芝居本体の中でも、そのまま同じ役を演じることになる。リアルから芝居へと移行する際のバリアフリー化を、あっけらかんとやってしまうしたたかさが、なんとも天晴れだ。
芝居自体は、ロックを志す少女の挫折と再生に、恋愛を交えて描くお手軽の域を出ないものだが、劇中で使われる音楽(もちろん、生演奏)が予想外に良かったのも、嬉しい驚きだった。安田奈加(ボーカルとキーボード)率いるFeeedilyというバンド、菊川朝子同様にちょっとマークしたい存在だ。(全体で180分程度)※次回は5月16日。  
■データ
ソワレ/渋谷7th floor
2007年5月7日と16日の2回のみの公演
作・演出/菊川朝子 音楽/安田奈加(Feeedily)
出演/畔上千春(ボーダビッチ)、上田遥、梅澤和美、上枝鞠生、森山夕子(動物電気)、菊川朝子
演奏/Feeedily(安田奈加、冨田浩之)、服部将典、荒井康太
オープニング・ゲスト/岡野直史(SGT)、石倉久幸(腰のOZZY)