(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝コンフィダント・絆〟パルコ・プロデュース公演

しかし、三谷幸喜の芝居も、チケットが手に入りませんね。プレオーダーを外し、発売初日にチケットぴあの店頭に並ぶも、開始10分で殆ど売り切れ。仕方なく、不快な思いをして、ネットオークションで手に入れました。(大阪は、ずいぶん余っていたという噂ですが、なぜ東西でこうも違う?)ということで、東京公演の千秋楽。
1880年代後半のパリ。窓の向こうには、建設中のエッフェル塔が見えている。ここは、四人の画家たちが、将来の成功を夢見て、共同で借りているアトリエである。四人とは、無名時代のゴッホ生瀬勝久)とゴーギャン寺脇康文)、それに世間の注目を浴びつつあるスーラ(中井貴一)と美術教師のシュフネッケル(相島一之)である。
絵が売れなくてはそのたびに落ち込むゴッホを、なんだかんだ言いながらも慰め役にまわるゴーギャン。世間の評価を得ながら、自分の才能をいまひとつ信じられないスーラ、そして四人のリーダーであり、仲間を気遣う調整役のシュフネッケル。賑やかにやりあう四人は、はたからも親友同士に見える。ところが、シュフネッケルが酒場で働くルイーズ(堀内敬子)をモデルとして雇ったことから、四人の絆に綻びが見え始めて。
コンフィダント・絆〟は、才能をめぐる残酷な寓話である。2部構成となっている第1部は、人物紹介と軽いエピソードの積み重ねで、シチュエーション・コメディ乗りのお馴染みのタッチ。いつもと違うと強調する劇評もあって、この得意のパターンを楽しめないのではと危惧していたが、それは杞憂だった。登場人物間の言葉によるジャブの応酬は、今回も楽しい。
そして第2部。ここからが、ドラマが非常に濃密。実は普段はダメ男のゴッホが、芸術家をして違う次元に存在することをさりげなく披露するエピソードののち、スーラが嫉妬と不安から自らの馬脚を現すくだりは、まだ序の口。才能をめぐり、それを持たない者に対して、その現実を残酷に突きつける終盤は、登場人物ばかりか、観客の心をも激しく掻き乱す。恐れ入った脚本の力だ。
3人の芸術家からそれを浴びせかけられるシュフネッケルの相島一之の、心の内面と外面を隔てる壁が崩れるばかりの芝居は圧巻で、正直、これまであまりいいと思ったことのなかったこの人を、すごいなと思った。役者では、生瀬、寺脇、中井も当然のことながら安定しているが、溌剌としたコメディエンヌぶりを発揮し、四人の芸術家の名前を織り込んだ印象的な歌を繰り返し歌う堀内敬子がとりわけ素晴らしかったと思う。(休憩15分を含め180分)※東京公演は終了、5月10日より大阪

■データ
東京公演千秋楽マチネ/渋谷PARCO劇場
4・9〜5・6(東京公演)
作・演出/三谷幸喜
出演/中井貴一寺脇康文相島一之堀内敬子生瀬勝久
音楽・演奏/荻野清子、(三谷幸喜