(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝大自然〟カムカムミニキーナ2007年春公演

八嶋智人、藤田記子、そして吉田も山崎も出ないカムカムミニキーナ。おなじみ野田秀樹の血をひく彼らの路線を離れて、佐藤恭子を中心にすえた〝ピロシキ〟に近い感じかと思いきや、ちょっと意外な内容でした。
スクール・オブ・ネイチャー(自然の学校)、略してSON(ソン)。山中の大自然に囲まれたスパルタ式の学校に赴任してきた溝口教諭(成清正紀)は、到着して荷物もほどかぬうちに、先輩教諭の澤田(清水宏)と鳩羽(今奈良孝行)から訳の判らない洗礼を受け、どさくさに紛れてダンプと綽名される問題児(佐藤恭子)の担任を押し付けられてしまう。
のっけから、清水と今奈良の客演コンビが、アドリブとギャグの応酬で暴走するが、受けにまわる成清や佐藤は、もうほとんど全編を通じて清水らのサンドバッグ状態。2人の繰り出すギャグは、ジャズでいえば腕利きたちのジャムセッションで、主宰の松村の意図したものも、インプロビゼーションにも似たこの展開の面白味だったのだろう。
3人の教師とダンプが壮絶な授業を繰り広げる過去と、すでに歴史の彼方に消えたソンを懐かしむ現在(ソン記念館のようなものが出来ている)が交互に演じられるが、比率は圧倒的に前者に置かれている。極論をいえば、現代のパートは、この作品を演劇的なものに仕立てるために用意されているつけたしのようなもの。現代のパートにのみ登場する松村の演劇的なまとめも、胡散臭さがプンプン臭うものだが、舞台装置と効果、それに台詞の力でそれを強引にまとめる力技でしっかり締める。
それにしても、清水と今奈良が散らすギャグ合戦の火花は強力で、今奈良の反則すれすれのつっこみで清水がタジタジになる場面もあって笑わせてくれる。(もちろん、受けにまわった清水の懐の深さあってのものなのだが)ただ、さすがに後半はやや息切れの場面もあった。長さの意義は十分に理解できるが、もう少し、全体を刈り込むべきだったかもしれない。そのあたりがやや惜しい。(120分)※30日まで

■データ
初日ソワレ/吉祥寺シアター
4・28〜4・30
作・演出/松村武
出演/清水宏、今奈良孝行(エッヘ)、成清正紀(KAKUTA)、松村武、佐藤恭子、長谷部洋子、田端玲実、中島栄治郎