(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝TES.-the testament tester〟神様プロデュース

神様プロデュースの〝TES.〟は、〝まず私たちが死なずに またこうして出会えたこと そのことに驚嘆するところから 始めたいと思います〟という印象的な一節から始まる。冒頭は、葬儀の場面。大学時代の共通の友人、宮前が死に、仲間達5人が集まっている。それから10年後、それぞれのもとに届けられた一通の手紙に導かれて、5人は想い出の場所に再び集合することに。
神様プロデュースは、日大芸術学部の劇団を母体に97年結成。以後、年数回のペースでコンスタントに活動。劇団名は当初〝幻想航海図〟だったが、2001年に〝神様プロデュース〟に改名された。
今回の当日パンフには、テキストとサブテキストをめぐる主宰の森達也の口上が掲載されていて、なんでも今回の脚本は、テキスト(すなわち台詞)がまったくなく、すべてがサブテキスト(すなわち台詞以外の状況説明)のみという状態から出発したという。しかし、そんな試みにも拘わらず、出来上がった舞台には実験作の胡散臭さはまったくない。今風の軽さが目立つものの、物語の流れがしっかりと打ち出された仕上がりとなっている。
物語の大部分を占めるのは、大学を卒業後、ばらばらになった5人の仲間たちが辿る辛苦のエピソードで、それをラジオ放送のDJのスタイルで繰り広げるあたりは、なかなか新鮮。それぞれの描き分けもしっかりしており、とりわけパントマイム風に演じられるコナン(鈴木華菜)のパートが切なく、悲しい。(ただし、ツバキの苛めのエピソードは長すぎるし、シンのパートではセルフパロディに溺れる場面もあり)
第三舞台の面影もちらりと覗くような気もするが(これは褒め言葉)、形にとらわれない物語の進行と、エネルギッシュな役者たちの間に漂う緊張感がいい感じだ。物語の落ち着く先がやや甘いような気もするが、生の肯定というテーマを印象的に浮かび上がらせるあたりは、とても心地よい。しばらくは、マークしたい劇団だ。(110分)※15日まで。

■データ
初日ソワレ/西荻窪遊空間がざびぃ
4・13〜4・15
・芝居月弥生2007参加作品
作・演出/森達也
出演/野口雄介、鈴木華菜、神野剛志、塩田良平、小松君和、高橋沙織
音響/井川佳代 照明/工藤雅弘(Fantasista?ish.) 舞台監督/小野哲史、渡辺陽一 舞台美術/松原裕介 衣装/DOCTOR メイク・ヘアアレンジ/魔女ッ娘シリィズ 演出助手/増山千花 制作/丸山かおり