(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝外は白い春の雲〟大人の麦茶第十一杯目

大人の麦茶は、早稲田大学演劇倶楽部出身の役者池田稔と北原幸久が、大学内の映画サークル浪人街にいた塩田泰造(作・演出)と結成した劇団。わたしは初見だが、今回の〝外は白い春の雲〟は、2004年5月に上演した〝パーティあけ〟の大幅改訂リメイクとのこと。
ビルの窓拭き仕事で、コンビを組んでいるふたりの男(池田稔中神一保)。その一方が、仕事の最中に窓ガラス越しに見かけたコーヒーショップのウェイトレス(長澤素子)に恋をし、相方はそれを成就させようと、偶然の交通事故を利用して、とんでもない一計を案ずる。
非常に手堅く、健全な笑いも織り込んだ、ウェルメイドな芝居。これは、ほぼ予想した通りだったが、予定調和の物語を2時間にわたり繰り広げて、ちっとも退屈させないこの劇団の力量には正直感服した。
役者たちの充実、演出の手堅さなども理由にあると思うが、不器用な男の片思いというありがちなシチュエーションを土台にしていながら、そこに乗っかる登場人物の機微に非常にきめ細かい配慮がなされている。ややもすると大味な展開になりがちなストーリーが、最後までいい意味の緊張感をキープするのは、脚本の手柄だと思う。(池田演じる窓拭き男のシンプルかつ奥行きのある人物造形や、登場人物たちに目を配ったうえでの絶妙な幕切れのおとしどころなど、随所にその手腕が発揮されている)
なお、なぜか〝パーティあけ〟の時、出演者のトップにあった旗揚げメンバーの筈の北原幸久の名が、今回は見当たらなかった。退団したのだろうか。評判高い役者だったので、観られなかったのは残念。(125分)※22日まで。

■データ
ソワレ/下北沢「劇」小劇場
作・演出/塩田泰造
出演/池田稔、大澤桂子、久保木秀直中神一保並木秀介、眞賀里知乃、長澤素子、熊谷美香、三宅法仁(innerchild)、前田憂佳ハロプロエッグ