(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝正しい街〟飛ぶ劇場 vol.26

作・演出の泊篤志が主宰する飛ぶ劇場は北九州市を本拠地とする劇団で、80年代後半から活動してきている。今回の演目は、福岡繋がりでてっきり椎名林檎の同題の曲に関連のある話だと早合点したけれど、どうやら直接の関係はないみたい。個人的には、街を作り上げた人々のその後の物語だと思った。
俗世間から遠く離れ、教会を中心に、ひっそりと人口120人あまりが暮らしている。そんな地図にない街に、地図をつくるために市役所から来たという女性が現れる。神父と使徒とよばれる教会のコアなメンバーたちは彼女を警戒するが、そんな矢先、使徒の一人が死亡するという事件が発生し、彼女は監禁されてしまう。
使徒の手引きで抜け出し、街で暮らす人々の秘密を覗いてあるく市役所の女性。一方、教会関係者の間では、死んだ使徒が3日後に復活するという噂が広まり、折りしも処女懐胎したという神父の妻のニュースもあって、街は騒然となる。そして、ついにその3日目がやってきて。
横長の舞台をサンドイッチするよう両側に並んだ客席。12人の使徒を演じる役者たちは、6人ずつ等間隔に散らばり、客席との間から舞台に昇り、引っ込む。宗教というテーマを、具現したかのようなこの特異なルールに支配された舞台には、独特の雰囲気がある。照明の効果や、小道具、そして衣装も、この閉ざされた街の異様な空気を見事に醸しだしているといっていい。
ただし、街をつくりあげた人々が辿る物語としては、ちょっとありきたりで、つまらない。軽いギャグを絡めたりしながら描かれる使徒たちの下世話な日常は、丁寧につくられてはいるのだが、実をいうと、やや退屈だった。
しかし、それが終盤、正面から宗教、それもキリスト教と向き合う姿勢が露わになると、にわかに緊張感が高まる。宗教の解釈として新味があるものではないが、テーマにきちんと対峙し、俗社会と神の関係を丁寧に再構築してみせるラストは、幕切れにふさわしい高揚感がある。先に挙げた舞台や小道具などの妙味が映えるエンディングは、まさに見ごたえ十分だった。(135分)

■データ
マチネ/にしすがも創造舎特設会場
2・10〜2・11(東京公演は2ステージ)
・東京国際芸術祭2007参加
作・演出/泊篤志
出演/有門正太郎、内山ナオミ、寺田剛史、門司智美、藤尾加代子、鵜飼秋子、内田ゆみ、木村健二、権藤昌弘、宗像秀幸、葉山太司、加賀田浩二、大畑佳子、宗真樹子(劇団きらら)
舞台監督/有門正太郎 照明/乳原一美 音響/杉山聡 衣裳/内山ナオミ(工房MOMO) 音楽/泊達夫