(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝UFO㎝(ユーフォーセンチメートル)〟あひるなんちゃら

目から鱗ではないけれど、開演前のアナウンスにちょっと意表をつかれる。え、携帯鳴ってもいいの。いや、もちろん、切りますけどね、電源。飲食もしないし。でも、それがケレンではなく、劇団のホスピタリティのように思えた初めてのあひるなんちゃら。
地方都市と思われる小さな町の公園に、小高い丘がある。そこに毎日やってきては、空に向かってUFOを呼ぶ不思議な少女(藻田るりこ)がいる。この町ではそんな彼女に話しかけるトンチンカンな人々があとをたたない。今日も今日とて、すれ違いなやりとりが繰り広げられて。
いうなれば、脱力系コントをコラージュのように繋げたもので、現在を軸に、過去に行ったり、未来にいったりもする。しかし、そこから物語のようなものは浮かび上がらないし、テーマのようなものの構築もない。ただ、ぬるい笑いの心地よさがあるだけなのだ。
緊張を強いる芝居は多いけれど、ここまで脱力させてくれる芝居も珍しい。ピンポイントでツボをつくコントも多いし(特に前半)、物語やテーマに頼らない空気の作り方には、ある意味前衛よりも前衛かもと思わせる不思議さがある。(ちょっと褒めすぎ)ともあれ、贔屓。まめに公演はマークをしていきたい劇団だ。(70分)

■データ
ソワレ/王子小劇場
2・9〜2・12
作・演出/関村俊介
出演/伯美乃里、黒岩三佳、根津茂尚、藻田るりこ、日栄洋祐、小野紀亮(MCR)、大室光来(ボーダビッチ)、稲垣俊平(劇団志村)、草野千裕(che carino!/che carina!)、田部寛之
舞台美術/コマツバラミワ 制作/中川 加奈子