(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝元始、女は太陽だったような・・〟毛皮族のアングラ経験劇場

コーヒー&シガレッツ〟(ジム・ジャームッシュ監督)というオムニバス映画は、その飄々たる面白さにリスペクトを捧げる演劇人も結構いるようで、この春にペテカンが〝タバコの煙とコーヒーの湯気〟というオムニバスを上演したし、今度は毛皮族が〝コーヒー&シガレッツ的な軽演劇〟というお題のもと、一気に4つの演目を上演するという企画を打ち出した。
〝元始、女は太陽だったような・・〟はその中のひとつ(演目A)で、主宰の江本によれば、松本清張的な世界を標榜したものとのこと。昭和36年に千葉県印旛郡の小さな村で、農薬による大量毒死事件が起こった。事件の舞台となったのは、ぶどうの栽培を生業とする農家の主婦たちが集まる婦人会で、新製品として開発中のワインに農薬が入れられていた。次々と容疑者が浮かび上がっていく中、語り手として登場する松江本清純子(江本純子)が事件の真犯人の謎をTVドラマ風に解き明かしていく。
青鞜平塚雷鳥といった女性解放運動という下敷きはあるが、松本清張の名をひっぱってくるほどの社会性を意識しているわけでもなければ、重厚さもない。二時間枠の推理ドラマ風をそう呼びたかっただけだと思しいが、軽演劇という軽さを謳い文句に掲げていることもあって、これはこれで悪くないと思う。
しかし、それにしても、この演目の初日の舞台の内容は、いただけなかった。台詞がきちんとはいっていない役者はいるわ、舞台上の段取りはめちゃくちゃだわで、芝居として観られる代物ではなかった。
原因は明らかに準備不足で、(直前まで稽古していたのだろう、開場と開演が15分おした)メンバーや主宰の多忙さもあるのだろうが、これで木戸銭をとるのはいくらなんでもあこぎというものだ。(個人的には、木戸銭の払い戻しがあってもおかしくないと、マジに思った)いくら軽演劇と謳っても、このクラスの劇団が、こういう手抜きととられかねない公演をやっていてはいけない。
どこか憎めない江本のお詫びの言葉もあったが、残念な舞台だった。(70分)
■データ
2006年11月4日マチネ/原宿リトルモア地下
11・3〜11・26
作・演出/江本純子
出演/高野ゆらこ、平野由紀、高田郁恵、武田裕子、柿丸美智恵、和倉義樹、金子清文、江本純子、延増静美(ダブルキャスト羽鳥名美子)