(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝おさびしもの〟ピチチ5

すごいぞ、ピチチ5(クインテット)。というわけで、行ってまいりました、ピチチ5の〝おさびしもの〟。ピチチ5の常連で、今回も出演している野間口徹が参加する親族代表を見て(8月のシアタートップス)、何人かの脚本提供の中で際立って良かった福原充則が作、演出するユニットの4回目の公演である。
コントと短い芝居の中間くらいの出し物5本立て。(厳密には、最初の話が最後にも繋がるので4本か)ひとつひとつのタイトルは、次のとおり。
  1 「oh!よしこ」(プロローグ)
  2 「隻腕くん」
  3 「魚の生徒」
  4 「牛丼太郎吉祥寺店」
  5 「世界をもっと複雑に」(エピローグ)
いずれも、思いつき程度の軽いアイデアが起点になっていると思われる。しかし、ピチチ5(すなわち福原の脚本)の面白いところは、それを妄想にまで高めていく流れであって、暴走したストーリーが行き着く先に、これまた観客を置き去りにするような飛躍感があるのが、なんとも愉快だ。
発想はコントでも、中間部をある程度の長さで展開して見せることで、芝居の形態にそこはかとなく近づけることに成功しているのもおおきな特長。そうなると、勿論のこと、役者たちの役割がいや増すわけだが、そのあたりをしっかりと支えるキャストもいい味を出している。
「魚の生徒」で熱血暴力教師が女生徒の死体を背負って走るロマンチシズム、そしてエピローグでの空中自転車がかもし出す叙情に胸をうたれたり、牛丼屋へ突っ込んでくる乗用車に度肝を抜かれたりと、波乱万丈をたっぷりと楽しませてもらった。
やるなぁ、ピチチ5。コントと演劇にあるかもしれない境界線をいい意味で無効化する素晴らしいユニットだと思う。(80分)

■データ
2006年10月14日ソワレ/下北沢駅前劇場
10・12〜10・16
脚本・演出/福原充則
出演/植田裕一(蜜)、碓井清喜、オマンキー・ジェット・シティー(ゴキブリコンビナート)、野間口徹(親族代表)、三浦竜一、三土幸敏(くねくねし)、吉見匡雄、横島裕(もざいく人間)、高橋美貴(あなざーわーくす)