(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝ブルーバーズ・ブリーダーズ〟ヨーロッパ企画第21回公演

上野樹里をスターダムへと押し上げた映画〝サマータイムマシーン・ブルース〟の後押しなどもあって、今や全国区の人気を誇るヨーロッパ企画。今年春の〝ウィンドウズ5000〟に続いて、今回の新作は7都市を廻るそうだ。
歴史上にたびたび現れては、さまざまな珍事を巻き起こす青い鳥。しかし、青い鳥の幸福のシンボルとしての人気には、依然として絶大なものがあった。近年の目撃情報を頼りに、さる広告代理店は、ついに青い鳥の捕獲に乗り出す。さて、代理店をあげての捕獲作戦の顛末は?
うーん、これは駄目でしょう。失礼だが、いいアイデアが浮かばないので、苦し紛れにいちかばちかの勝負に出たのかと勘ぐってしまう。つまり、烏合の衆ならぬチームワークのまったくない、のんしゃらんとした作戦部隊が、それぞれの自滅的な行動で、捕獲作戦を大混乱に陥っていくとおいう流れなわけだけれど、何を考えたのか、そのプリミティブな思いつき(素案のようなものだと思う)を、料理も工夫もしないまま、観客に差し出してしまっている。その結果は、無残だ。
このアイデアに面白くなる可能性があることを認めるにやぶさかではないが、単発のギャグや思いつきを散りばめただけでは不足で、例えば物語の流れに結び付けていくとか、なんらかの形で熟成させる必要があったのではないか。時間に追われたのかもしれないし、人気の高まりに伴うプレッシャーもきついのかもしれないが、これを見せられる側はもっときつい。役者たちの混沌ばかりが目についた印象があって、実に寒い思いにとらわれた。
正直言って、台詞がかぶりあって単にノイズにしか聞こえない集団シーンのガヤガヤが続く冒頭の数十分は、拷問を受けているようにつらかった。短い上演時間が駄目というわけではないが、今回はそれが内容の貧弱さを露骨に語っていたように思う。(70分)

■データ
2006年9月25日ソワレ/下北沢ザ・スズナリ
9・22〜10・1(東京)
作・演出/上田誠
出演/石田剛太、酒井善史、諏訪雅、土佐和成、中川晴樹、永野宗典、西村直子、本多力、松田暢子、山脇唯/冨永茜、他
制作協力/日和庵