(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝ジャンボリー〟げんこつ団

げんこつ団は、その劇団名に似合わぬ(?)若き女性たちによるユニット名で、徹頭徹尾ギャグにこだわった舞台を1991年の旗揚げ以来上演し続けている。(聞くところによれば、女子美術大学内で88年に結成とのこと)メンバーは、劇団HPのクレジットによれば、植木早苗、春原久子、岡本恵実、大庭智子、武輪加奈子、吉田衣里の6人で、この中には他の劇団への客演で見かけた名もあるような気がする。今回のタイトル〝ジャンボリー〟は、(主にボーイスカウトなどの)国際大会の他に、呑めや歌えの大宴会だとか、長時間の娯楽ショーという意味がある。
短いコントを繋いでいく形式、と言っていいだろうか。ノーベル賞を授けられるほどの恐るべき発明とそれをめぐる陰謀があり、逃げながら犯行を繰り返す強盗のコンビがいて、またある会社の平凡な日常もある。それらのシチュエーションがいれかわり、たちかわり登場する、やがて漠然とはしているが、ストーリーの流れのようなものが見えてくる。
時にシュールになるお笑いの下敷きは、モンティパイソンだろうが、単なる本歌取りの域に収まらないエネルギーのようなものがあって、最初は違和感を感じても、次第次第にその世界へと引き摺りこまれていく。基本的には、それぞれが独立したナンセンスのコントなのだが、繰り返し登場するキャラクターや、ギャグ間の繋がりなど、そこにひとつの世界観を構築していくような作りこみの魅力もある。そもそも二つの地球の物語というのも、終わってきれば人を喰ったあっぱれな設定である。
ひとつひとつのシーンは、てっきりメンバーのエチュードで作り上げたものだろうと思い込んでいたが、クレジットを見ると作・演出は吉田衣里となっている。これがひとりの作家の書き下ろしたものだとすれば、相当の力技だろう。差し挟まれる映像やダンスも相当な力の入れようで、凝った映像のエンディングまで、たっぷりと笑わせてもらった。

■データ
2006年9月21日ソワレ/下北沢駅前劇場
9・21〜9・23
作・演出・映像・音響/吉田衣里、演出助手・振付け/植木早苗、照明/池田圭子、出演/植木早苗、春原久子、岡本恵実、大庭智子、大場靖子、河野美菜、菊川朝子(Hula-Hooper)、高園陽子(SPARKO)、こんどうえみこ(ハラホロシャングリラ)、和田好美、吉田衣里