(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝Cat In The Red Boots〟SHINKANSEN☆NEXUS vol.2

劇団新感線のNEXUSがつく公演は、ありていにいってしまえば、アイドル系のプロダクションと提携し、商業ペースに乗っかり、低年齢層をも視野にいれた比較的軽いお芝居をやるというコンセプトだと思うのだけれど、中島かずきの作でもなければ、主役級の出演もない。だからと決めつけるわけではないが、本家の公演に較べていささか見劣りがするのは否めないところだ。主演に生田斗真というジャニーズを据えた今回の〝Cat In The Red Boots〟も、わたしが見た範囲では、あまりいい劇評を見かけない。
ちらしや当日配られる歌詞の載ったシートにクレジットはないが、シャルル・ベロウの「長靴をはいた猫」を下敷きにしている。なるほど、粟根まこと、中谷さとみ、市川しんぺーのトリオによる、ハリー・ポッターからの露骨な本歌取りで幕を開ける舞台は、児童向け演劇の乗り、お子様ランチ的な賑やかさで甘口の舞台だ。しかし、これが退屈かというと、違う。休憩を挟んで3時間弱という長時間を、そこそこ飽かせずに見せるのだから、これは侮れるものではない。
その要となっているのは、新感線の脇役陣による堅牢なサポートで、これは去年の青山劇場〝荒神ARAJIN〟でも証明済みだが、この企画の最大の強みだろう。個々人の演技のレベルが安定しているのは言うまでもないが、それぞれに見せ場をもっており、さらには彼らが出ているだけで芝居の流れのようなものが生まれるあたりが頼もしい。
しかし、華のある役者はやはり必要で、それを一身に背負っているのが、マオ役の梶原善だ。単にコメディリリーフ的な使われ方でなく、竜族の話が絡む後半はほとんどが彼の独壇場だったといっても言いすぎではない。梶原がいなかったとすると、この芝居も随分と寂しいものになっていたに違いない。
主役もそこそこ頑張ってはいるのだが、ネコのノラ役の松本まりかや、グレーテル姫のすほうれいこも、なかなかの好演を見せる。とりわけ、松本は、ときどき音程に不安をのぞかせるものの、元気な動きと台詞で、溌剌とした空気とテンポの良さを生み出している。
主催者の思惑はさておき、この手の公演で、演劇人口を開拓することはそれなりに意味があることだし、中身もそうそう馬鹿にしたものではないと思う。ただし、過度な期待は禁物だろう。それに、それなりの木戸銭(8500円!)を払っているのだから、この程度は楽しませてもらわないと、いくら芝居好きでも合わないのである。

■データ
2006年9月20日ソワレ/東京グローブ座
9・15〜9・28
作:戸田山雅司 、演出:いのうえひでのり 、出演:生田斗真 松本まりか すほうれいこ 粟根まこと 市川しんぺー(猫のホテル) 右近健一 逆木圭一郎 河野まさと 村木よし子 インディ高橋 山本カナコ 礒野慎吾 吉田メタル 中谷さとみ 村木仁武田浩二 佐治康志 梶原善