(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

新宿アウトロー ぶっ飛ばせ(藤田敏八監督/1970年)

【物語】
傷害事件で臭い飯を食い、仮釈放で出所した西神勇次(渡哲也)は、通称シニガミと呼ばれ、ヤバイ世界でも恐れられていた男。勇次の出所を出迎えたのは、直と名乗る青年(原田芳雄)で、マリファナの密売に手を染めていた。ところが、最近取り引きでドジを踏み、時価三千万円のマリファナと相棒の修平を失っていた。勇次の力を借り、マリファナと修平を取り戻そうとする直は、親しい笑子(梶芽衣子)の店に連れていった。友愛会と名乗る右翼系のヤクザと、そこに雇われたサソリと異名をとる殺し屋(成田三樹夫)を相手に、直と勇次は戦いを挑むが、修平は死に、報復を受けてた笑子はサソリに殺される。復讐を誓う二人は、暴走族の青年たち(沖雅也がリーダー)の助っ人を得て、銃で武装し、友愛会の本拠を襲撃するが、会長湯浅はマリファナを持ち、屋上からヘリで逃げようとする。勇次と直は、壮絶な銃撃戦の末にサソリを倒し、会長も射殺した。マリファナを取り戻し、現金を強奪した勇次と直はヘリに乗り込み、上空へと飛び立っていった。
【メモ】
・昭和40年代の高度成長期の新宿が背景として登場する。西口の高層街はまだ建設中で、ビルの上の工事現場でロケもやっている。一方、それとは対照的に、開発をよそに、猥雑なまま変わらない歌舞伎町の路地も登場する。
原田芳雄が若くて、ハンサム。ただし、純正の二枚目ではなく、そこはかとない屈折感がある。当時、この人の役者としてのステータスはそれなりに高かったものと思われるが、松田優作がこの人のエピゴーネンと陰口をたたかれた時代があったことなど、最近の若い人はおそらく知るまい。
・バーのママ役の梶芽衣子は、どことなく浅野ゆう子似だ。この時期、すでに日活の〝野良猫ロック〟のシリーズが始まっており、数年後には東映に移籍し〝女囚さそり〟や〝修羅雪姫〟がスタートする。すなわち、女優として上り坂にさしかかっているところなのだが、本作では後年の陰りのイメージはまだ薄い。
・歌舞伎町にあるスナック風の店〝BAR笑子〟では、浅川マキの〝かもめ〟がかかっている。個人的には、カルメン・マキのカバーが贔屓だ。(アレンジは原曲と同じ)ちなみに、作詞は寺山修司
・音楽は、〝タイム・パラドックス〟という名盤でプログレ・ファンにはお馴染み、玉木宏樹
・結末もハッピーエンドだし、シリーズ化を視野にいれていたと思われるが、その後、続編は作られなかった模様である。
【データ】
東京国立近代美術館フィルムセンター[日本映画史縦断①日活アクション映画の世界]2006年9月20日PM3:00からの上映
監督:藤田敏八、脚本:藤田敏八、永原秀一、蘇武路夫、撮影:萩原憲治、美術:千葉和彦、出演:渡哲也、原田芳雄梶芽衣子成田三樹夫、今井健二、沖雅也