(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

10cc - Graham Gouldman and friends @渋谷duo MUSIC EXCHANGE

90年代に全盛期のオリジナルメンバーによるレコーディングが行われ、その後2度の来日公演も行っている10CCだが、正直、もうその頃には、彼らにはあまり興味をもてなくなっていた。10CCの良い時代は、73年のレコードデビューから、75年の「オリジナル・サウンドトラック」、76年の「びっくり電話」、そして、ゴドレー&クレームが抜けた77年の「愛ゆえに」あたりまでがぎりぎりで、いくら懐かしい顔ぶれが集まっても、往年の輝きを取り戻すことはありえない、という冷静な思いがあったからだ。
彼らの来日公演は、77年秋のツアーで中野サンプラザでの演奏に立ち会っている。この時も全盛期とはいえず、来日メンバーは、エリック・スチュワートとグラハム・グールドマンで、「イン・コンサート」というライブアルバムとほぼ同じ演奏内容だった。まぁ、悪い演奏ではなかった、とは記憶しているが。
というわけで、今回の来日も、集金ツアー、という陰口がまっさきに浮かんだ。おまけに、エリックは抜けて、グラハムと彼の友人たちという構成とくれば、10CCとは名ばかりの来日だなぁ、と思っても仕方のないところだと思う。しかし、虫の知らせではないのだが、来日のニュースとともに妙に懐かしい気分に襲われて、チケットを即手に入れてしまった。しかして、当日の演奏は、そういうわたしの(つまりオールド・ファンの)期待に十分応えてくれる内容だったのだ。
まず良かったのが、その選曲だ。本稿最後のセットリストをご覧頂けると判るように、かつてチャートをにぎわせた彼らのスマッシュ・ヒットがずらりと並んでいる。それも、全盛期の作品が中心で、ライブでは珍しいナンバーもかなりの数交じっている。
また、演奏のクオリティも悪くない。オリジナル・メンバーはグールドマンひとりだが、サポートするのはいずれも腕利きのミュージシャンとみた。とりわけ、パーカッション、ギター、そしてボーカルまでも担当する人物は八面六臂の活躍で、出だしが鈍いという欠点はあるものの、エリックのパートを歌わせると、声はシャープだし、歌も上手い。
さらに、バンドとしてのチームワークもなかなかのもので、楽器のアンサンブルもまずまず。とりわけ、10CCのひとつの売りともいうべきコーラスワークでは、オリジナル10CCもかくや、というハーモニーを聞かせ、観客を唸らせた。
グラハム・グールドマンがフロントということもあって、彼がソングライターとして鳴らした60年代の作品をアコースティックでやってくれたのも嬉しかった。ホリーズやハーマンズハーミッツ、ヤードバーズのヒット曲が、グールドマンの歌声で甦ったのは、10CCの曲を聴けたのとはまた違った懐かしさがあった。(ちなみに、福岡、大阪、名古屋では、この4曲はやらなかった模様)
時間にすると、1時間半弱。時間的にやや物足りなさも残ったが、10CC、そしてグラハム・グールドマンの魅力を堪能し、再発見した一夜だった。

(セットリスト)※7〜10がグールドマンのセルフカバー
1. Wall Street Shuffle 2. The Things We Do For Love 3. Good Morning Judge 4. I'm Mandy Fly Me 5. Life Is A Minestrone 6. Art For Art's Sake 7. Bus Stop  8. No Milk Today  9. Look Through Away Window  10. For Your Love  11. Silly Love 12. Doona 13. The Dean & I 14. From Rochdale To Ocho Rios 15. I'm Not (Actually) In Love 16. Dreadlock Holiday (encore )17. Rubber Bullets