(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝仮想敵国〟AGAPE store #10

AGAPE storeの芝居は、1月の「Bigger Biz」に続いて二度目。松永玲子さんのセクシーな姿がお目当てという不純な動機で観た前回だったが、芝居としてはやや土臭いというのが正直な印象だった。それなりに笑えたコメディだったが、松尾貴史ばかりが目立っていた。(続編は楽しみにしているが)で、今回の動機は、ケラの本だ。『仮想敵国』は、“Seven 15minutes Stories”という副題にあるとおり、7編のコメディ短篇からなるオムニバスで、それぞれ作者が違う。予告を見ると、後藤ひろひと長塚圭史の名に交じって、ここのところ贔屓のケラリーノ・サンドロヴィッチがあって、だったら観てやろうと思った。実は(ははは)辺見えみりのファンでもある。
主君の命を受け、敵の城に忍び込む7人の忍者たちを描く土田英生の作品は、ルーティンどおりのお話だが、繰り返しのギャグが笑える。原発の清掃委託業務をテーマにした怖い話は、千葉雅子の作品だったか。そして、最後に2時間ドラマの結末を題材にしたケラの
ブラックなお笑い。これがベスト3か。テロ事件で犠牲となった妻と死体置き場で対面する男の悲喜劇を描く第1話は、いかにも長塚圭史らしい作品だが、短篇としての切れがない。もしかしたら、長篇の素材だったかもしれないという気にもなる。後藤ひろひとの戦場コメディも、ネタが明らかになってくればくるほど笑えたが、あと一歩。
彼らの芝居には、松尾貴史のリーダーシップはやはり不可欠なようで、個性的な役者たちはそれぞれに熱演しているのだが、松尾のずっこけがないとしまらない。(というか笑えない)春風亭昇太狂言回しは、いい味もあるのだが、芝居が下手なために詰めを欠いていて、煩さが先にたっておる。贔屓の辺見えみりはまだまだ固く、残念ながら次回以降に期待というところに留まった。
全体をつなぐインタルードも凝ったつもりなのだろうが、わずらわしい印象が残った。聞くところによれば井手茂太演出のダンスらしいのだが。このレベルのお笑いであるならば、せめてもっとサクサク見せてほしかった。
カーテンコールで『BIGGEST BIZ〜最後の決戦!ハドソン川を越えろ〜』の予告をやった日があったらしいのだが、わたしが観た日はなかった。くーっ、残念。


■データ
2006年6月6日/池袋サンシャイン劇場