(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

ムーンライダーズ:Postwar Babies Tour 2005 @渋谷AX

ドラムスのかしぶち哲郎が病欠でのライブ。前回のツアーは、キーボードの岡田が不在だった。フロントマンの鈴木慶一は、こういう状況だと観られるときに観ておいた方がいい、とか、生存確認の集まりみたいだ、みたいな冗談を舞台上から飛ばしている。しかし、考えてみると、メンバーがそういう年齢にさしかかるまでバンドが存続すること自体、素晴らしく、そして稀有なことだと思う。しかも、ライブに先行してリリ−スされたニューアルバム「P.W Babies Paperback」の出来映えがこれまた良かったことを考えると、ある種奇跡のようだともいえるのでないだろうか。
さて、会場の渋谷AXでのライブというと、1Fはオールスタンディングのことが多いような気がするけれど、この日は半分以上に客席が設置されていた。これも、ミュージシャンと同様に、ファンの年齢をも考慮してのことだろうか。わたしは立見なので、1Fの後方壁寄りに自分の位置を確保する。
予定時刻を10分ほど過ぎ、演奏が始まる。新作アルバムと同じく、イントロダクションの音楽が流れる中、突然、曲がカットイン。「Frou Frou」である。予想を裏切るような形で、前半は過去の代表曲が並ぶ。しかし、それらの曲がウォームアップであったかのように、体が暖まった彼らは、次第にテンションを高め、新曲を披露しはじめる。ドラマーはカーネーションから矢部のサポート。その若々しいドラミングからはかしぶちほどの深い情感は伝わってこないが、タイトなリズムを刻み、バンドの演奏を引き締めていく。
ところで、この日バンドとしてのテーマがどこにあったかは不明だが、ボーカルのパートをメンバー間でいつも以上にめまぐるしく持ち替え、廻していく趣向はユニークだった。もともと、鈴木慶一のボーカルは脆弱なところもあり、そういう意味では他のメンバーがボーカルをとってもなんらライダーズの曲として遜色はない。むしろ、歌の線は細いものの、その分メンバーの個性が前面に出てくる感じがして、面白かった。
あと、「夢ギドラ85’」だったと思うが、歌のパートに続くインストをインプロ風に引き伸ばしたカンタベリー調の演奏が素晴らしかった。またこの日、とりわけ目だっていたのは武川で、トランペットをはじめとして、さまざまな楽器を持ち替え、ライダーズの演奏を色彩と色気を付加していく。声の出もよく、ボーカル曲ではなかなか艶っぽい歌声を聴かせてくれた。
ほぼ2時間、アーティストとオーディエンスも、ヘトヘトになるほどの時間ではないが、しっかりとした満腹感が残った。石の上にもウン年というわけではないが、ライダーズの息の長さは、昔からのロックファンの心の支えのようなものになってるような気がする。彼らとともに齢を重ねることの心地よさを再確認したライブでありました。

(セットリスト)
1.Frou Frou 2.Who's gonna die first? 3.グルーピーに気をつけろ4.Modern Lovers 5.さすらう青春 6.Morons Land 7.銅線の男 8.ボクハナク 9.30 10.犬にインタビュー11.夢ギドラ85’ 12.Wet Dreamland 13.スペースエイジのバラッド 14.ヤッホーヤッホーナンマイダ 15.水の中のナイフ 16.地下道Busker's Waltz 17.Waltz for Postwar.B
(アンコール)
18.今すぐ君をぶっとばせ 19.BEATITUDE