(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「F」青年団リンク・二騎の会

青年団演出部に所属する宮森さつきと多田淳之介のユニットが青年団リンク・二騎の会。これまでふたりで作・演出をやってきたというフォーマットを崩し、すでにこのユニットでは出演者としてお馴染みの木崎友紀子(青年団)を演出に招いての新作。

一人と一体。あなたのことを思えば思うほど、あなたが遠くなっていく。棄てられた世界で生きる女とアンドロイドが、季節をたどる物語。(青年団サイトより引用)

時代設定はおそらく近未来、そして登場人物の一方はアンドロイド。早い話がSF仕立ての物語なのだが、男女の会話劇からは恋愛の物語が静かに立ち上がってくる。しかし、密室的な空間という色恋にうってつけの舞台設定にもかかわらず、描かれる男女の関係は幼さのしっぽを引き摺る未熟で歯痒いばかりのものだ。
そんな大人まではまだ少し間があるヒロインと血の通わない人造ロボットの物語は、終始静謐な空気に包まれ、たおやかに時間が流れていくのだが、終盤にわかに悲劇の色合いを帯びてくる。そして、幕が降りたあとに残るはかない余韻は、まるで人類の未来への不安をも象徴するかのように冷たく、切ない。
汚れのないヒロインを演じる端田新菜のキャスティングが絶妙だが、そんな彼女の気持ちを受け止める多田淳之介の血の通わない人間味も見事で、ふたりの心のすれ違いとささやかな交流が深く心に残る作品だった。(100分)

■データ
永遠の妹役者ともいうべき端田新菜が大本領を発揮のマチネ/こまばアゴラ劇場
1・29〜2・7
作/宮森さつき 演出/木崎友紀子
出演/端田新菜、多田淳之介