(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「幸せの歌をうたう犬ども」谷賢一単独公演『当てられ書き』

ダルカラ(DULL-COLORED POP)の冬眠はともかく、青年団演出部所属の報にびっくりさせられた谷賢一。自由度の高い活動が期待される2010年の第一弾は、役者たちが自分でやりたい役のディテールをリクエストし、作家(=谷賢一)がそれに沿って脚本を書き上げるという普通じゃない(褒め言葉です)舞台づくりへのチャレンジで。
死を覚悟したヒロインを救ったのは、宇宙の彼方からやってきたエイリアンたちだった。彼らの目的は、地球人たちの不幸という概念を理解すること。かくして記憶を抹消されたヒロインは、奇妙な触角を植えつけられ、宇宙人の観察下、ふたたび世間へと放たれるが。
役者たちの指定は、「妹」、「宇宙人」、「ゲイ」、「結婚サギ師」、「すごく嘘つきな奴」、「アル中のニート(元作家)」、「ハイテンションロック歌手」、「目的のためには手段を選ばない女」、「ヒロイン」、「挙動不審な男」だったということだが、兎にも角にも1つの物語にまとめあげた豪腕はお見事といいたい。お世辞にも完成度が高いとはいえないが、登場人物個々のエピソードや、場面場面が、観終えたのちにも残像のようにいくつも浮かび上がってくるのがいい。
自己責任というわけでもないのだろうが、それぞれの役を演じきって、大きく輝く役者たちが多かったのも、この舞台のひとつの収穫といっていいだろう。いきのいい若手役者たちのショーケースといった趣きも感じられて、わたしはまた何人か贔屓が増えた。彼らを目当てに、今後足を運ぶであろう舞台にも期待が膨らむ。(90分)

■データ
開場時間が押しに押したマチネのプレビュー公演/新宿タイニイアリス
2・2〜2・4
作・演出/谷賢一
出演/萱怜子、菊地奈緒(elePHANTMoon)、如月萌、鈴木麻美(北京蝶々)、鈴木アメリ(犬と串)、西尾友樹、藤尾姦太郎(犬と串)、堀雄貴(犬と串)、安川結花(アロッタファジャイナ)、山本真由美