(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「Musical ジェーン・エア」松竹

公演期間中に、モントリオール映画祭で主演作の「ヴィヨンの妻」(根岸吉太郎監督)を受賞したというニュースも飛び込んできた(監督賞だが)松たか子がヒロインを演じる松竹製作のミュージカル。

両親を突然の病気で亡くしたジェーン・エア松たか子)は寄宿学校に預けられる。劣悪な環境の学校で教師の虐待や親友の死に耐えて成長し、やがて自立の志を持った彼女は教師の資格を得て、地方の富豪の邸に家庭教師として赴任する。邸の主人ロチェスター橋本さとし)の謎めいた挙動に不審を感じながらも少しずつ彼に魅かれていくジェーン。身分の違いゆえに苦しむ彼女だったが、二人はやがて行き違いを乗り越えて結婚を誓う。しかしその時、隠されていたロチェスターの過去が暴かれる…。(松たか子公式サイトより引用)

原作は、シャーロット、エミリー、アンのブロンテ三姉妹の長姉シャーロット・ブロンテの(ちょっと臭い言い方だが)ゴシック・ロマンスの金字塔にして、世界文学史上に燦然と輝く「ジェーン・エア」。今回のテキストは、『レ・ミゼラブル』でおなじみのジョン・ケアードの手がけたもので、本人が演出も行っている。ちなみに本邦初演。
ヒロインの半生を描く原作に流れる長い時間を、どう料理するのかというのがに大きな興味があったけど、世界名作劇場とでも言いたくなるようないわゆるダイジェスト乗りだったのに、ちょっとがっかり。
しかし、その枠組みの中で、主人公のジェーンを演じている松たか子は、やはり抜群の存在感。歌唱も悪くない。彼女の非ミュージカル的な歌を、他の出演者と比較してやや劣るとする劇評が一般メディア(確か新聞)にあったけど、それはあくまでミュージカルという形式に囚われた業界的な見方じゃないのかな。わたしには、オペラチックな歌唱で朗々と歌う出演者より、松たか子の立ち位置の方がぐっと観客に近く感じられたけど。
子役を含めて脇を支える役者も揃って達者で、無難すぎるくらい無難、といってしまうと放言になってしまうか。ロチェスター役の橋本さとしは、やや臭くも映るが、ゴシックロマンスの登場人物だったら、これくらい濃くて正解かもしれないと思わせる説得力あり。(20分の休憩を含めて170分)

■データ
舞台上にしつらえられた客席がちょっと羨ましかったソワレ/日比谷日生劇場
9・2〜9・29
原作/シャーロット・ブロンテ 脚本・作詞・演出/ジョン・ケアード 作曲・作詞/ポール・ゴードン
翻訳/吉田美枝 訳詞/松田直行
出演/松たか子橋本さとし幸田浩子寿ひずる、旺なつき、伊東弘美、山崎直子小西遼生、福井貴一、壤晴彦、小西のりゆき、安室夏、鈴木智香子、谷口ゆうな、さとう未知子、山中紗希、阿部よしつぐ、加藤ゆらら、角田萌夏、佐藤瑠花、横田剛基、増田桜美、大鹿礼生