(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「笑われガスター」インパラプレパラート9th Contact

公演の案内とは別に、たまに時候の挨拶のような葉書も届く律儀なインパラプレパラート。ほぼ年一回のペースで着実に公演を行っている彼らだが、前々回作にちょっとあとをひく面白さを感じたので、一回スキップしてしまったが、二年ぶりに足を運んでみた。
昔々のお話。ヨーロッパとおぼしき某国に、とにかく人を笑わせずにはおかないコメディアンのガスター(堀川裕介)という男がいた。彼自身には面白いことを言ってる自覚はなく、なぜか口から出る言葉の数々が、勝手に他人を笑わせてしまうのだった。その才能で祖国の内紛を救い、王から勲章を授けられたりもした。
しかし、国民的なコメディアンとしての地位にもかかわらず、彼は家族もなく、孤独だった。そんな彼の心を癒してくれる少女ムヒ(増田瑞穂)と出会った。彼女は、ガスターの話でちっとも笑わない。ふたりは同じ種類の人間だったのだ。ようやく心を通わせ合える相手と出会い、急速に仲良くなっていくふたりだが、実はムヒは親許を逃れてやってきた隣国のプリンセスだった。兄の王子の悪巧みで、彼女を取り戻さんと隣国が攻め入ってくるが、ガスターの笑いはそれをも撃退する。しかし、ガスターとムヒには皮肉な別れが待ち受けていた。
初日ということもあったのだろうが、台詞のとちりと思われる箇所や段取りの悪さが目立ち、いまひとつの仕上がり。子ども向けの寓話のようにまとまってしまい、それがちょっと物足りなくもある。もう少し毒のようなものが前面に出てきてももいいように思う。前回観たときに伝わってきたオフビートな感覚も、この日は希薄だった。
客席から眺めるていると、全体がやや長過ぎるようにも感じられ、テンポを上げればもう少し刈り込めるのに、とも映った。内山ちひろをはじめとして、役者たちのスキルは決して低くないので(登場人物のキャラクターはしっかり立っていた)、次回作はもう少し癖のある脚本にチャレンジしてもらいたい、というのが個人的な感想。(120分)

■データ
ガスターの可愛いポーズとそのイラストが印象的なソワレ/中野ザ・ポケット
12・3〜12・7
作・演出/大矢場智之
出演/内山ちひろ、大矢場智之、小泉隼人、中村掌子、堀川裕介、増田瑞穂、板倉美智子(θハナウタカプセルθ)、稲葉俊一、齊藤文、高塩誠(θハナウタカプセルθ)、中村千春、山中桃子、小山春奈、山中寿子、松尾美沙、斉藤友紀子(Yuck)、山口瑛美、空閑つばさ(つばさプロジェクト)、谷山えみ、山下まなみ、羽田野洋人(Hotcake Panic Play)、滝沢信(Hotcake Panic Play)、白井良、皆川涼、AD笠原、趙徳安、稲葉裕紀