(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「いそうろう」4×1h project Play#0

さて、後半。観客投票で見事1位を獲得した「いそうろう」は、快快の篠田千明の作。先に冨士山アネット主催のイベント「EKKKYO!」では、快快が大道寺梨乃と山崎こーじ(皓司)というキャストで、すでにリメイクver.を上演している。
猫を飼うように、ぷーのイチコ(百花亜季)をルームメイトに迎えたしっかり者で働き者のモモカ(大川翔子)。しかし、女ふたりの蜜月期はたちまち過ぎて、最近はイチコの気ままさが、モモカにはちょっと鼻についてきている。ある日、帰宅したモモカの目にとまったのは、冷蔵庫の前にこぼれたアイスコーヒー。イチコは、例によって、自分の後始末もしていないのだ。部屋を見渡すと、読みかけの雑誌も散らかり放題。一向に仕事を探す気配もなく、ひがな一日、ごろごろして、テレビを見てばかり。
きっかけは、晩御飯の献立だった。ビーフシチューが食べたいと能天気にのたまう居候に、積もり積もった不満が飽和点に達したモモカはキレてしまう。相手の怒りように怯んで、ひたすら謝るイチコ。しかし、モモカの怒りは収まらず、イチコに出て行けと言い渡し、自分も家を飛び出してしまう。1時間後、頭を冷ましたモモカがビーフシチューの材料を買って帰宅すると、イチコは姿を消していて。
先のリメイクver.は、ひとり二役の大道寺と常にその相方を山崎が形態で演じるといういかにも快快らしいユニークな作りだった。それに対して、黒澤世莉の演出はオーソドックスで、モモカとイチコを普通に二人の女優が演じる。しかし女友達間の微妙な距離感を描いて、そこに浮かぶ一瞬の切ない感情を浮かび上がらせる手腕に、まったく不足はない。
模造紙のカンバスを書き割りのよう使って、役者が物語の進行に合わせてそこに背景や小道具を描いていく手法も新鮮。ここでも、黒澤世莉が繰り出す演出の妙味は光っている。
しかし、それにしても、快快(旧小指値)の芝居は、あの手この手で楽しませてくれる個性派の表現形態も素晴らしいが、その裏側からさりげなく浮かび上がってくる叙情は、いつもはっとさせられる。今回、快快の役者は出ていないが、起用されたふたりの女優も脚本に込められた情感を実に濃やかに演じてみせた。幕切れの一瞬、モモカ役の大川の目に浮かんだ涙がとても印象的でした。(40分)
■データ
なんでもリーディングのときとはキャスティングが入れ替わってるそうで、ホントびっくりの最終日マチネ/渋谷Gallery LE DECO 4F
9・20〜9・28
作/篠田千明(快快) 演出/黒澤世莉 (時間堂)
出演/大川翔子、百花亜希