(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「そう高くないビルのお話」本田ライダーズ

役者の生見司織や松村綾乃らをあちこちの客演でよく見かけるような気がする本田ライダーズ。旧ホームページがまるで墓場のようにネット上に転がっていて、もう活動をやめたのかと思ってました。そのホームページもリニューアルされて、再スタートの狼煙になるかの久々の新作公演。
ある朝、とあるビルの屋上。思いつめた顔をして佇む女性に、歯磨きをしながら男が話しかける。君は飛び降りないね、と決めつける彼に、なぜ?と問う彼女。だって本当に死ぬ人はこういう人だもの、という彼の言葉とともに、当の女性が登場、彼らの前をさっさと横切り、飛び降りてしまう。
間もなく何もなかったかのように戻ってきた女性に唖然とする彼女。実は、飛び降りた女性は幽霊で、自殺したものの成仏できずに、今も日に数回投身を繰り返しているという。一方、男の名はビル夫といい、気の違った姉のビル子とともに、このビルで暮らしている。ビル夫、幽霊と親しくなった彼女は、自分が有名な陶芸家の後とりで、そのプレッシャーに耐えかね、悩んでいたことを打ち明ける。しかし、そのビルの取り壊しの話が進んでいることが明らかになったことから、管理人らも入っての騒ぎになって。
前半は、全体にやや上滑り気味で、役者たちもかみ合っていない印象がある。物語やシチュエーションに興味が抱くことができないので、登場人物も奇矯さばかりが目立ってしまう。感情移入がまったくできないし、退屈だしで、正直帰りたくなりました。
しかし、出演者が総出で奇妙なダンスを踊るシーンあたりから、ちょっとずつ面白くなってくる。おおっ、いいね、と思わせてくれるのは、幽霊の正体が明かされ、気のふれた姉が口にする謎の言葉の意味するところが判るくだりで、おしまい近くになってようやく登場人物たちに興味が沸いてきました。
1時間40分という(やや長い)上演時間は、彼らなりの頑張りを見せたのだろうが、やや無謀。全体として役者の力不足もあって、前半の冗長さは否めない。クライマックスのカタルシスを生かし、1時間強くらいで見せれば、テンポもまとまりもいいものに仕上がる気がする。次回は、そのあたりを改善してもらいたい。(100分)
■データ
当日受付でくどいほど知り合いの劇団関係者はいないか訊かれた最終日マチネ/阿佐ヶ谷シアターシャイン
1・25〜1・28
作・演出/林 剛央
出演/生見司織、末松丈治、長野慎也、松村綾乃、宇田川直紀、金坂拓馬、新井智丈、加藤智恵