(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「バター〜サイドAのノリ、サイドBの反り〜」はえぎわ

ENBUゼミの松尾スズキクラス出身のノゾエ征爾が主宰するはえぎわ。あちこちへの客演でも大活躍の主宰者だけれど、わたしは町田水城やカオティックコスモスといった男優陣がいつの間にか贔屓になっていて。でも、劇団としては今回が初見。
野原のど真ん中(?)に開いた穴。そこに、通りがかった二人が、立て続けに落っこちる冒頭。そこは古い井戸のようで、膝のあたりまで水がたまっている。少女と初老の男はただただ呆然とするばかりだったが、やがて男は問わず語りのようにひとつの物語を語り始める。親と生き別れた兄弟が辿る数奇な運命の物語を。
舞台中央にぽっかりと開いた穴、上手奥には井戸の中、下手にはモンティパイソンを思わせる大きな足のオブジェ、というなんとも奇抜な舞台装置。そこで繰り広げられるのは、穴に落ちた男女、悲劇的な運命の兄弟という物語性にお手本があるとすればまさにこれが、という世界で、さらにはも穴に落ちた少女までが自分の物語を語り始めるという、まさに物語性に淫した展開だ。
ひたすら物語性を追求する展開は、なかなかの見応えだが、お笑いにも、シリアスにも傾かないので、どっちつかずの印象もある。行き着く先に何らかのカタルシスがほしいところだが、クライマックスに飛躍はあるものの、物語は放置されたままなんらかの帰着がなかったのが惜しまれる。
穴に落ちた少女と老人を、役者たちが交替で演じるアイデアが面白く、シチュエーションの展開にさらなる工夫があると良かった。ナイロンから客演の長田は、ホームグラウンドよりも達者な芝居を見せて、うまく物語りの絵柄にはまってました。(110分)

■データ
前説がひどくつまらなく思えた最終日のマチネ/下北沢ザ・スズナリ
8・5〜8・12
作・演出/ノゾエ征爾
出演/町田水城、カオティックコスモス、井内ミワク、鈴真紀史、滝寛式、竹口龍茶、踊子あり、小百合油利、鳥島明、長田奈麻(NYLON100℃)、ノゾエ征爾