(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝青春荘の人々〟ペテカン

昨年は年1回の公演しかなかったが、その〝タバコの煙とコーヒーの湯気〟はなかなか楽しいコント集でした。95年に濱田龍司の主宰、本田誠人の作・演出でスタートし、演劇シーンでもユニークな位置を占めているとおぼしい彼ら。今回の〝青春荘の人々〟は、オール劇団員のキャスティングで臨んだ新作である。
アパートもおんぼろなら、そこで暮らしている人々もちょっとおんぼろ。青春荘には、青春というにはいささか薹のたった面々が暮らしている。管理人のじいさんがぎっくり腰で入院している間、孫娘の涼子が臨時の管理人としてやってきた。しかし、パチンコで家賃を払う男や、ひも同然の男、水商売の女らのノンシャランとした暮らしぶりに、涼子は愕然とする。
高橋留美子の〝めぞん一刻〟が下敷きにあることを作者は隠していない。(涼子を響子と呼び間違えるギャグが繰り返し出てくるなど)というわけで、オマージュ的な扱いなのだとは思うが、ペテカンらしい笑いに置き換えられてはいるのものの、原典の存在感ゆえ、ところどころで元歌が透けて見えてしまううらみがある。登場人物の造形にも、そのきらいあり。
それと、誠実かつ堅実な演技で頑張る涼子役の長嶺稔枝にはちょっと酷かもしれないが、彼女にヒロインとしての華が感じられないのが残念だ。脇の下宿人たちのキャラがきちんとたっているだけに、彼女の影の薄さが目だってしまっている。最後のまとめは定石なのだろうが、ちょっと説教くさい。上演時間も、やや長すぎる印象があって、マイナス点。下宿ものコメディとしてそこそこに楽しい仕上がりだが、この劇団がもうひとまわり大きくなるには、やはり型を破る何かがほしいところ。(120分)※4月3日まで。

■データ
ソワレ/新宿シアタートップス
作・演出/本田誠
出演/長峰稔枝、大治幸雄、斎田吾朗、濱田龍司、堀正哉、羽柴真希、四條久美子、本田誠
音楽/田中大介