(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝嘘と真実〟演劇ユニット〝トレランス〟二人芝居Vol.1

公演間近にもかかわらず、あっさりとチケットがとれたので、客の入りが心配だったけど、わたしが観た日(回)は、立ち見が出るくらいだったので、まずはほっとした。ひと昔前だったら、このふたりの組み合わせは、プラチナペーパー必定だったろう。
上杉祥三が書いたこの芝居は、劇場の楽屋を舞台に、全編を敏腕刑事(上杉)と婦人警官(長野里美)のダイアローグで見せるミステリ劇である。本の出来は、完璧なフェアプレイとまではいかないが、ミステリとしての肝も一応きちんと押さえられている。
天才と謳われた女優が劇場で変死を遂げるが、事件性が明らかにされないままに、自殺として始末されようとしている。それに納得がいかない刑事が、婦人警官を相手役に、事件とその周辺を再現しながら、真相を推理していく。
ふたりが、それぞれ事件関係者になりきって、事件を再構築していくというのが演劇的な仕掛けとなっていて、いわずと知れた芸達者のふたりだけに、丁々発止のやりとりが全編よどみなく繰り広げられていく。
例によってオーバーアクション気味の上杉の芝居の前では、長野里美はやや抑えた感じに映るが、シリアスとコメディエンヌの才を兼ね備えた独特のいい味は健在である。ふたりの呼吸もあっていて、舞台としての仕上がりもまずまずといっていいだろう。
第三舞台以来の長野ファンとしては、彼女がハメを外す姿をもっと観たかった気もするが、現在の女優としての充実は十分に伺える芝居だった。何はともあれ、長野の溌剌としたキュートな姿を久々に拝めて、満足のいく舞台でありました。
■データ
マチネ/新宿シアタートップス