(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

マーシャ・マラーと再会

それほど熱心に古書店をのぞくわけではないが、目にとまるとついフラフラと店内に吸い込まれてしまう。学生時代に、絶版本を捜し求めて、都内とその周辺の古書店を彷徨い歩いた頃の後遺症のようなものかもしれない。たいした買い物があるわけではないが、手ぶらで出るのもなんなので、つい何冊か購入してしまう。
最近の収穫は、徳間文庫から出ていたマーシャ・マラーで、6冊を刊行している筈だが、今では新刊書店でまったく見かけなくなった。今頃になって、このほとんど忘れかけていた女性作家をマークする気になったのは、今年、講談社文庫から出た『沈黙の叫び』で、これまでシャロン・マコーンものを軽視していたのを、大いに反省させられたからだ。
『沈黙の叫び』は、主人公である私立探偵のマコーンが、ひょんなことから自分が養子であることに気づくというイントロで幕をあける自分探しの物語である。かくして、彼女のルーツ探しが始まるのだけれど、インディアンの歴史や土地をめぐる汚職事件などが絡まり、物語は展開していく。
考えてみると、シリーズの21作めにもなって、自分の出自の秘密にようやく気がつく主人公というのもナンだが、作者もよほどの思い入れを込めたのであろう、作品の出来は悪くない。読み終えた途端に、そういえば、とかつて徳間文庫で出ていた作品の数々を思い出したのだ。
でも、さほど見つけにくい本ではないのかもしれない。探しはじめると忽ちのうちに、『タロットは死の匂い』『チェシャ猫は見ていた』『安楽死病棟殺人事件』、『カフェ・コメディの悲劇』の4冊が見つかった。夫であるプロンジーニとの共作『ダブル』は持ってる筈なので、残るは『殺意の日曜日』『奇妙な相続人』の二冊だ。
思い返してみると、マラーの初紹介は、今から二十年以上も前のことで、講談社文庫から出た『人形の夜』だった。当時の標記は、マーシャ・ミュラーだったと記憶している。故小泉喜美子さんの訳ということもあって、大いに期待したものだが、あまり評判にはならなかった。機会をみて、シリーズ作品を改めて読み返してみようと思っている。

沈黙の叫び (講談社文庫)

沈黙の叫び (講談社文庫)