(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「神様とその他の変種」NYLON100℃ 33rd SESSION

この人の忙しさは尋常じゃないはず。いくら相手が美女だからといって、結婚生活なんか送ってる余裕はないような気がするのだが。そんな余計な心配までしてしまう、緒川たまきとの電撃入籍のニュースの衝撃(!)もさめやらない中、ケラが書き下ろしたナイロンの新作公演である。
(以下、ネタバレを含みます。未見の方はご注意を!)
テーマは、家庭の秘密。そういうのを、英語でskeleton in the cupboard(戸棚の中の骸骨)というようだけれど、まさにそんな言い回しがぴったりくるような洋館で暮らしている一家。彼らが家の中に仕舞い込んでいる秘密とは何か。苛められっ子の長男を庇護するために、次々と気に入らない家庭教師をクビしていく母親。一方、父親の方も借金を抱えているらしく。
お題拝借とでもいうのか、過去に自分が作った楽曲からそのタイトルをとっての新作だ。(ケラ&ザ・シンセサイザーズ「15エレファンツ」所収)そもそもは、新作の産みの苦しみもろもろから、この曲のタイトルからひとつの芝居を書けないかと発想したのが原点のようだけれど、しかしなぁ、動物も出てくるし、神様(を自称する男)も出てくるけど、正直それらが物語の本筋と連鎖していかないもどかしさがある。元の曲への拘りから、中途半端に縛られてしまったというか。
でも、親子関係、夫婦関係をめぐる秘密がネガからポジに変る仕掛けは上手いと思った。峯村の母親役がなかなか重心低く安定しているのと、山内の一見軽薄な父親との組み合わせもいい感じで、息子役のみのすけ、さらには祖母役の植木がそれぞれ家族を構成するピースとして、いい味を出している。無責任な外野から観ると、神様やら、動物を絡めずに、家族のテーマを凝縮させた方が良かったような気もするが、どうか。(休憩10分を含め180分)※5月17日まで。その後、名古屋、大阪、広島、北九州公演あり

■データ
生憎の雨に降られたソワレ/下北沢本多劇場
4・17〜5・17
作・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演/犬山イヌコみのすけ峯村リエ大倉孝二、廣川三憲、長田奈麻、藤田秀世植木夏十水野美紀山内圭哉山崎一