(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「愛の渦」ポツドールvol.18

ポツドールに足を運ぶようになったのは「夢の城」からなので、この岸田賞受賞作を観るのは、わたしは今回が初めて。4年前の初演時のキャステイングを入れ替えて(一部同じ)の再演であるとともに、レギュラー公演としては間もなく閉館となる新宿シアタートップスの最終公演となる。
(以下、ネタバレを含みます。未見の方はご注意を!)
ロフト付きの高級マンションで夜な夜な開かれる乱交パーティ。この新手で過激な風俗イベントに、サラリーマン、OL、学生、保母など、セックスだけを目当てにした男女たちが集まってくる。借りてきた猫のように、お目当ての異性に話かけることもできない第一ラウンド。最初のパートナーと一戦を終えて、固さもとれたか、大胆な発言や客同士の陰湿ないびりも飛び交い始めた第二ラウンド。リラックスし過ぎて、金返せと暴れだす者、一方なぜかこんなとこに来てマジ恋愛に走りそうな者、そして、村上龍に憧れる遅れてきたカップルらが加わって、乱交も佳境の第三ラウンド。しかし、そこに思わぬトラブルが発生し。
刺激はやがて慣れてしまうことを痛感した今回の再演。わたしの中では、ポツドールと性的な描写の過激さは切っても切れないものだったのに、今回はそれがずいぶんと後退しているように思えた。もしかしたら、作者自身もセクシュアルな要素に、飽いてきているのではないか。
しかし、人間模様のリアルさと、恋愛とセックスの相関関係など、決してスマートとはいえないが、しっかりとテーマを浮かび上がらせる手堅さに衰えはない。いや、むしろ前作「顔」あたりから、それにさらに磨きがかかってきているような気がする。パーティ参加者の間にやがて親近感が醸成される人間関係や、カップルの痴話げんかにのぞく恋愛のもどかしさなど、ありがちなシチュエーションにも濃やかさがあって、妙に説得力がある。過激さと純情さとがひとつのドラマの中で同居する姿に、ポツドールのひとつの到達点のようなものを感じた。(130分)
■データ
隣席の唾呑む音が聞こえてしまう、とにかく座席が狭いマチネ/新宿シアタートップス
2・19〜3・15
作・演出/三浦大輔
出演/米村亮太朗、岩瀬亮、古澤裕介、井上幸太郎、富田恭史(jorro)、脇坂圭一郎、美館智範、江本純子毛皮族)、内田慈、遠藤留奈、佐々木幸子(野鳩)、山本裕子(青年団