(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「なにわバタフライN.V」パルコ・プロデュース公演

ほぼ5年ぶりの再演。パルコ劇場での初演を観ているが、であればこそ演出、出演は同じ顔ぶれでも、再演とあれば足を運びたくなるのが人情というもの。わざわざN.Vと謳うのであれば尚更のことだ。初演は、文句なしにウェルメイドなひとり芝居だった。
インタビューなどを読むと、今回の再演の眼目は「肩の力を抜く」だったようだ。作者自身が脚本の全面見直しをしたのも、そのためだったのかもしれない。芸談といえば、ある種の緊張感がつきものだし、事実前回は観客を前のめりにさせるような吸引力があったが、今回はいい意味で客席との距離感がある。戸田恵子が観客に肩の力を抜かせる場面などもあって、過剰になりがちな緊張感を見事に緩和している。
劇場が小さくし、生演奏の音楽を外し、セットを簡略化するなど、再演にあたっての変更点はいくつもあるが、基本的にはシンプルな作りを心がけ、その分作品の密度を高めようという狙いか。観た目の印象は初演と変りないようにも思えるが、鮮度が落ちていないあたりに見えない工夫がありそうだ。
それでも初演のインパクトはさすがにないが、軌道修正はあっても三谷の演出は依然としてきっちりと観客の気持ちを掴んでいる。戸田恵子のハマり具合を見るにつけ、森光子でいう「放浪記」になってしまう可能性があるなという思いが、ふと頭をよぎったりもして。(100分)

■データ
再々演よりも別の女優が演じるミヤコ蝶々伝を観てみたいと思ったソワレ/三軒茶屋シアタートラム
2・7〜2・28
作・演出/三谷幸喜
出演/戸田恵子