(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「カガクするココロ」青年団全国二本立て公演

平田オリザのカガク(科学)を主題にした連作は、1990年の青年団第17回公演『科学する精神』、1992年の第24回公演『北限の猿』、1997年の第33回公演『バルカン動物園』の三部作があって、さらに2008年のリーディング特別企画の『森の奥へ』と連なっていく。(あちこちのサイトからの孫引きなので、多小不確か。ご容赦を)
三部作は、それぞれ何度か再演されている筈だけど、わたしは初めて。今回のお正月をはさんだ『カガクするココロ』と『北限の猿』のカップリング公演は、3月に『バルカン動物園』の若手公演も控えていてこともあって、そんな未体験者には、一気に全体を俯瞰するには絶好のチャンスなわけで。

ある国立大学の生物学研究所。類人猿を人間にまで進化させる一大プロジェクトの準備が進められている。各分野の研究者、大学院生、学部生たちが、遺伝子工学分子科学について議論する。同時に、恋愛、求職、自殺未遂といったコミカルな日常も繰り広げられていく。(青年団サイトよりあらすじ引用)

20年近くも前の作品なのに、研究施設のラウンジを舞台に、そこで描かれる人間関係や言葉のやりとりから立ち上がってくる若者たちの姿は、現代の物語としてまったく違和感がない。まずは、それに驚いた。青春群像劇としての完成度が普遍の域にあるということか。
それにひと役買っているのは、現代口語演劇の手法のあれこれを駆使しながら若い役者たちが繰り広げるやりとりの瑞々しさだ。恋愛模様や狂言自殺のスキャンダルと共存する学問の世界の裏庭が、実にビビッドに表現されていく。若手も役者の層が厚いな、青年団
そんな中で、科学的な好奇心の赴くまま、無邪気に神の領域へと踏み込んでしまう無自覚ぶりに、ぞっとさせられる場面も。エリート集団の驕りがのぞく一瞬、というのはさすがに言い過ぎかもしれないが、倫理って何だっけ、という素朴な疑問が浮かぶのも事実。そういう意味で、終盤間近、女性陣がお絵描きする一見牧歌的なシーンも、和むどころか、わたしにはかなりコワかったのだった。(90分)

■データ
時間帯の接近したマチソワが嬉しいマチネ/こまばアゴラ劇場
12・26〜1・26(東京公演)
作・演出/平田オリザ
出演/兵藤公美、工藤倫子、村井まどか、山本雅幸、安倍健太郎、荻野友里、河村竜也、小林亮子、二反田幸平、堀夏子、村田牧子、海津忠、木引優子、桜町元、佐山和泉、鄭亜美