(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「世田谷カフカ」〜フランツ・カフカ「審判」「城」「失踪者」を草案とする〜NYLON100℃ 34th SESSION

サブタイトルにあるとおり、カフカの小説3篇をモチーフにした新作。ケラとしては、2001年にオリガト・プラスティコのために書いた「カフカズ・ディック」に続くカフカを素材にしてのチャレンジになるわけで。

意外性に富んだ筋運びに夢中になるうち、いつの間にか登場人物に感情移入して、一緒に泣いたり笑ったり怒ったりする。そんな楽しみ方が演劇鑑賞のスタンダードになっているのだとしたら、今回の公演を観て、面食らい、戸惑う人も少なくないかもしれない。
ここ何年かのナイロンでやってきたこととは明らかに異質の表現を目指すことになるだろうし、それが現在の我が国の演劇界の潮流からは大きくはずれるのはまず間違いないから、気が進まぬところを無理してまで来て頂くこともないけれど、我々が「世田谷カフカ」でやろうとしていることは、さして特別なことではない。
たとえマイノリティではあったとしても、これもまた、エンターテイメントの、ごく当たり前のスタイルだと信じたい。大切にする要素がいつもとはちょっと違うだけだ。
文学界にあって、フランツ・カフカの小説がそうであるように。
手掛かりはカフカが未完のまま遺した三編の長編小説。舞台は東京都世田谷区。
久しぶりに解放されてみようと思う。(チラシより引用)

稽古の途中経過で、学芸会のようと予告されていた新作。上記引用にもある「やろうとしていること」は、エチュードから芝居を作るというやり方だったようだ。ナイロンの役者陣は、個性派も多いし、芸達者も多いので、この手法は吉と出ても不思議じゃなかったが、個人的には楽しめる仕上がりではなかった。
エピソードが拡散し過ぎているのか、散漫だし、全体も長すぎる。もう少しエピソードの取捨選択を厳格にやるべきだったのではないかと思う。「城」の主人公を演じる吉増裕士部や、水野顕子演じる劇作家のアパートのシーンなど、部分部分には印象に残る場面も少なくないのだが。(休憩15分を含む185分)

■データ
中村靖日を見て「運命じゃない人」を思い出したソワレ/下北沢本多劇場
9・28〜10・12
作・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演/三宅弘城村岡希美植木夏十、長田奈麻、廣川三憲、新谷真弓、安澤千草、藤田秀世、皆戸麻衣、喜安浩平、吉増裕士、杉山薫、眼鏡太郎、廻飛雄、柚木幹斗、猪岐英人、水野顕子、菊地明香、白石遥、野部友視、田村健太郎、斉木茉奈、田仲祐希、伊与顕二、森田完、中村靖日、横町慶子