(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「中国の不思議な役人」PARCO presents

寺山修司のこの戯曲については、もちろん知っていたけれども、32年前のPARCO劇場が初演だったとは知らず、びっくり。パルコ初演出だという白井晃が、この作品をなぜ?というちょっと素朴な疑問もかかえて劇場へ。

舞台は上海。この街を支配する中国の不思議な役人は、不死なる存在と噂されていた。しかし彼には唯一「死」を迎えられる方法があった。それはまことの愛を知ること。何人も愛さない愛せない役人はすでに死を忘れて数百年が経つ。だが、人攫いにさらわれて、娼婦館に売られた少女花姚と出会い、少女の愛を験すために花姚を人形のように弄ぶが、次第に花姚が役人を無垢な心で愛しはじめる…。(公式サイトより引用)

没後久しい寺山修司の作品は、すでに新しい古典。とすれば、さまざま解釈があって当然だろうが、今回は音楽や衣装ばかりが目だってしまった印象。白井晃の演出は、アクがなく、原典のエログロをとっつき易いものにしている手柄はあるのかもしれないが、舞台の向こうに見えてくるものに乏しく、それなりに楽しめても、観終えたあとが何も残らないように感じられ、空しく感じた。
舞台上の賑々しさの中で若手役者の個性が埋没してしまっているのは惜しいが、大駱駝艦組や秋山菜津子はさすがに頑張っている。しかし、見どころは初演のときは伊丹十三だったという平幹二朗の役人役で、派手派手な衣装で舞台をゆったりと縦横し、周囲を圧する姿は、実に強烈。え、これで76歳なの。怪物ですね、この人。(110分)

■データ
ディスカウントチケットがずいぶんと出回っていたようなマチネ/渋谷PARCO劇場
9・12〜10・4
作/寺山修司 演出/白井晃 音楽/三宅純 振付/小野寺修二
出演/平幹二朗秋山菜津子岩松了夏未エレナ田島優成、小野寺修二、春海四方吉田メタル、内田淳子、町田マリー、エミ・エレオノーラ、初音映莉子、高山のえみ、吉村華織、岡田あがさ、佐藤ひでひろ、河内大和、田村一行(大駱駝艦)、奥山ばらば(大駱駝艦
演奏/宮本大路(sax)、スティーヴ エトウ(perc