(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「暗ポップ」空間ゼリーvol.11

「I do I want」@サンモールスタジオから、ほぼ1年というインターバルを経ての新作「暗(くら)ポップ」。その間に、メンバーから岡田あがさの名が消えて。
ある病院におけるグループセラピーの一週間コース。心療内科の新しい試みだが、セラピーの目的は予防医療のようなもので、保母さんやフリ−のライター、ニートのマザコン、営業マン、ぷーなど、病の一歩手前の参加者がずらり。企画者である若手の女医は、笑顔で参加者と接し、スタッフを元気に励ます。最初は緊張気味だった参加者も、次第に慣れてくるとお互いに摩擦も生じてきて。
おっとりとして、人柄も穏やかだが、人前でうまく喋ることが出来ないコンプレックスを抱えるヒロインの華を、斎藤ナツ子が好演。強烈な個性で周囲を圧することの多かった岡田あがさは去っても、この人さえいれば空間ゼリーは安泰だと思えるほどの存在感と安定感がある。彼女が参加者のひとりに恋心を抱く展開は、痛い結果に終ってしまうが、それを健気に乗り切っていく姿は、主人公の華の成長を伺わせる。
明暗好対照のふたりとして描かれるヒロインの華と女医の亜矢(小川真琴)だが、実は亜矢には深刻な悩みがあり、試練を経た華の前途には最後に明るい光が射す。見た目や現在の状況がその人のすべてじゃないということが言いたいのだと思うが、主題としてはやや予定調和の感も。むしろ参加者や入院患者、医療スタッフが織り成す人間模様の数々といった各論部分が面白く、それをもっと観たかったという気がする。(120分)

■データ
アイドル目当ての観客が目立ったソワレ/赤坂RED/THEATER
8・26〜8・30
作/坪田文 演出/深寅芥
出演/斎藤ナツ子、半田周平、猿田瑛、西田愛李、阿部イズム、深寅芥(以上空間ゼリー)、小川麻琴、江賢、TAKERU(TNX)、八木ひろあき、岩田博之、塚田まい子、能登有沙(ハロプロエッグ)、仙石みなみ(ハロプロエッグ)、澤田由梨(ハロプロエッグ)