(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「サマーゴーサマー」あひるなんちゃら

駄弁芝居というキャッチフレーズも定着して久しいあひるなんちゃら。駄弁とはいうけど、なかなかどうして、彼らお得意のちょっとファニーな世界は、大いに心を癒してくれるわけで。そんなあひるなんちゃらの夏をテーマにした新作。
繁盛しているようには見えない映画館。常連客は、どうみても少ない。しかし、上映する作品は、館主のお眼鏡に適った作品のみで、まだ世に出ていない巨匠の卵たちが、自分の作品を携えて、訪ねてきたりもする。夏のある日のこと、そんな映画館のロビーで、館主はひたすら何かに向っている。彼女がやっているのは、甥っ子の夏休みの宿題で、彼女の家系では代々そういう慣わしとなっているらしい。しかし、夏休みが残り少なくなっても、宿題はまったく終る気配がなく。
主題は、終らない夏。いや、比喩ではなく、本当にこの夏、いつになったら終るんだ、という内容。彼らなりの不条理劇ではあるのだけれど、微妙にズレたり、噛みあわなかったりするオムニバス調の会話劇が、今回もてんこ盛りになっている。
彼らのキャッチフレーズに、確か、笑いはあるけど涙はない、というのがあったと思うが、今回は観終わったあと、テーマゆえか、ちょっと郷愁めいた余韻も残る。おなじみのドライなユーモア一辺倒もいいけど、こういったハートウォーミングもありかも、と思わせる。
シリアスでも達者な黒岩三佳と根津茂尚だが、ホームでのコメディエンヌ、コメディアンぶりは、やはり水を得た魚。ちょっとネジの緩んだ並行世界といった趣きのあひるなんちゃらの世界を、今回も愉快に旅させてもらった。(70分)

■データ
自主制作のテーマソングも賑々しいソワレ/下北沢OFF OFFシアター
8・19〜8・24
作・演出/関村俊介
出演/黒岩三佳、関村俊介、根津茂尚、篠本美帆(チーム下剋上)、永山智啓(elePHANTMoon)、江見昭嘉(MCR)、澤唯(projectサマカトポロジー)、小林タクシー(ZOKKY)、佐藤達(劇団桃唄309)、石田潤一郎