(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「狭き門より入れ」PARCO presents

この公演を企画するteam申(チームさる)は佐々木蔵之介の演劇ユニットだが、前川知大とのコンビは二年前の2回目だった「抜け穴の会議室」に引き続いて二度目のこと。(ちなみに、旗揚げの「ときには父のない子のように」は、蓬莱竜太の作・演出だった)
(以下、ネタバレを含みます。未見の方はご注意を!)

人間は、いつの時代にも何か大きな存在に取捨選択を繰り返されていたら――。それを知ってしまった人間は、どのように行動するのか――。
舞台は、ある街にあるコンビニエンスストア。取捨選択される事実を知ってしまった男と、その周辺の人々は、先にある道を自身たちの意思で選ぼうとする。それぞれが思う「希望」とは……?選ばれることが正しいことなのか、生きる意味を賭けて、自分も人生の行く末を選ぶ、より良い世界を目指し希望を求めてそれぞれの覚悟を見出すまでを描くSF劇。 (公式サイトより)

生まれ変わり(輪廻転生)という基本アイデアは悪くなかったとしても、物語としてやや不完全燃焼の感が残ってしまったのが前作で、今回は言わばそのリベンジと勝手に思っているわたし。でも、そんな思い込みにも十分に応えてくれる出来映え。コワくてファンタスティックな前川ワールドは、ほぼ全開。今の時代を象徴するコンビニという地点に座標を定めたドラマ作りも、上手いと思う。
ただ、世界の更新というテーマにリアリティを持たせるために、非日常と日常を辻褄合わせする課題解決が必要になるわけで、物語がややそれに追われている感じもある。今回は初演でもあるし、今後イキウメでの再演などの可能性も考えると、それは追い追い均していけばいいかな、という気もするもするが。というわけで、再演を熱望。
当然のことなのでさほどの感動はないが、主宰の佐々木蔵之介が世をすねるエリート役を熱演。醒めたキャラクターが、火を吹くような熱血に変っていく主人公を好演している。ただひとつ、まさにこの役はこの人といううってつけの手塚とおるが、この日はなぜか台詞をやたらトチったり、噛んだりしていたのが残念。本来は達者なのに、こういう日ってあるんですね。(115分)※東京公演は終了。このあと、大阪、広島、福岡を予定

■データ
たまたま隣り合わせた老夫婦が「判らなかったけど、良かったね」と話していたソワレ/渋谷PARCO劇場
8・17〜9・6(東京公演)
作・演出/前川知大
出演/佐々木蔵之介市川亀治郎中尾明慶、有川マコト、手塚とおる浅野和之