(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「常に最高の状態」劇団、江本純子vol.2

毛皮族とその周辺の活動では、作・演出ともに卵の殻を引き摺っている感のあった江本純子だけど、今回の3か月連続上演の目的は、そこからのステップアップではないかと勝手に思っているわたし。酸いも甘いも知り尽くした町田マリーとの「まじめな話」がホップ、現代口語演劇のトップランナー前田司郎を役者として招いた「セクシードライバー」がステップ。そして、その締めくくりとなる今回の公演が、果たして実りあるジャンプとなるかどうか。
都心のギャラリーで催されていると思しきアート展。若いクリエーター系女子たち何人かで共同出展しているようで、その会場にちょっと場違いなおばさん二人組が客としてやってくる。彼女たちは姉妹で、どうやら一方の娘も出展者のひとりのようだ。若い女子たちと噛みあわないやりとりを繰り返すおばさんたち。それがいつの間にか、酒盛りをすることになって。
池谷、柿丸、内田の顔ぶれだけで、面白さは想像できるというものだけれど、実際はそれを遥かに上回る。アダルト組の丁々発止は言うまでもないが、下の世代の内田が見せるキレっぷりが見事。いや、唖然としました、あの瞬間。以前、岡崎藝術座で見せたテンションを彷彿とさせる。
その三人に、怯むことなく絡んでいく内田亜希子安藤聖もなかなか頑張っている。その結果、五人の女たちが織り成す魔の人間模様は、しばし、これが芝居であることも忘れてしまうほどの臨場感が生まれた。女性たちの台詞や所業が、一見いきあたりばったりのようでいて、最後にはある種の普遍が見えてくる展開も見事。ステップアップ三部作(とわたしが勝手に呼んでいるだけだが)の締めくくりとしては、またとない出来映えになったと思う。
次は、これをどう毛皮族に活かしていくかですね、江本さん。前代未聞の過密スケジュールのようだけれど、秋以降の展開に期待が膨らむ今日この頃。(80分)

■データ
開場と同時にル・デコがあっという間に満員になったソワレ/渋谷ギャラリーLE DECO 5F
7・28〜8・2
作・演出/江本純子
出演/池谷のぶえ、内田慈、内田亜希子安藤聖、柿丸美智恵