(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「アルバトロス」ホチキスvol.23

気がつくと2時間超。確か、前にも同じ思いを抱いた記憶が。ホチキス、饒舌だよなぁ。
リストラで会社をクビになった事を家族に言えないまま、毎日妻から弁当を受け取って出社するふりをする中年のサラリーマン(加藤敦)。一方、ローカルテレビのドッキリ番組だった筈なのに、どこがどうしたのか相棒に逃げられた漫才コンビの片割れ(橋本哲臣)。運命は、このふたりを結びつけ、7日間限定の漫才コンビを組ませることに。
なんだかんだ言っても、うまいですね、米山和仁の脚本。この人の本は、ミステリの手法が実に巧みに織り込まれている。これは、ちょっとした職人芸だと思う。今回の物語も、ご都合主義なところはあるけど、それが茶番にならないぎりぎりの線を、ぶれることなくきっちり歩き切る。
饒舌と書いたけれど、もちろんこれは褒め言葉のつもりだ。長丁場にはわたるのだけれど、中だるみで観客を飽かせることがない。観客を楽しませるサービスも旺盛で、今回でいえば、加藤と橋本の漫才は、門外漢のわたしではあるが、本職はだしの面白さに映った。
役者陣は、どうしても加藤や小玉らの芸達者が目立つが、ホチキスのクレイジーな世界を現実に繋ぎとめる役割を果たしている齊藤美和子が、わたしは贔屓。今回も職を失った夫を影で優しく支える妻を素敵に演じていました。(130分)

■データ
ホチキスとこの劇場の相性の良さを感じるマチネ/王子小劇場
7・23〜7・28
作・演出/米山和仁
出演/加藤敦、橋本哲臣、山崎雅志、小玉久仁子、齊藤美和子、村上直子、山本洋輔、江本和広、米山和仁