(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「旅がはてしない」ひょっとこ乱舞第21回公演

前回の「プラスチックレモン」@吉祥寺シアターの無限に膨らんでいくイマジネーションの世界に、いたく感動したひょっとこ乱舞。個人的には、去年観た芝居の中のベストのひとつかも。さて、それに続く「旅がはてしない」は、4年前に王子小劇場で上演した作品に、大幅改訂を加え、リニューアルしたものとのこと。

――そこには道があって人が暮らしていた。
『旅がはてしない』は旅にまつわる物語です。とはいっても旅行鞄ぶら下げて海外旅行に行ったりするわけじゃありません。「人と人とのつながり」で出来たネットワークを旅する話です。物語の舞台は「ミチ」から始まってやがて「ウチ」へ、さらには「マチ」へと拡張されてゆきます。まだ見ぬ誰かと出会うため、登場人物たちは海を越えビルを越え、時間まで越えて旅をします。彼らは身体を乗り換え、記憶情報を崩壊させたりしながら、それでも旅を辞めません。
「なんでそんなにまでして誰かと繋がんなくちゃいけないの?」いうなればこの話は、そんな疑問に対しての僕の答えです
(特設サイトの主宰ごあいさつから引用)

地上30cmから90cmの間にあって、そこでしか聴けないラジオ周波数によってしかコミュニケートできないミネストローネという空間。そこでの人の繋がりを左右するシャッフルという現象。SFという形を借りてはいるが、この作品は人と人のもっとも根源的な繋がりの手段、コミュニケーションを主題としている。
人がいるところにはコミュニケーションが生まれるという普遍のテーマが、しっかりと全編を貫いている。しかしなぜか、観客はそれを蜃気楼を見るように、漠然と眺めるしかすべがない。そんな印象だ。
挿入されるダンスも素敵だし、断片的だけどはっとさせられるシーンもあるのだけど、それらの点が線に繋がっていかないもどかしさがある。才気走ったり、欲張りなのは、ひょっとこの持ち味だし、観る側としてものぞむところだが、物語りたい何かがある以上、もう少し観客フレンドリーであってくれてもいいのではないか。
というわけで、さらに咀嚼を加えて、ぜひとも再度の改訂を望みたいと、今回おいてきぼりをくった観客は願うのである。(150分)

■データ
客入れやロビーのスタッフにもう少しスキルアップがほしいマチネ/東京芸術劇場小ホール1
7・17〜7・21
作・演出/広田淳一
出演/チョウソンハ、中村早香、橋本仁、笠井里美、松下仁、根岸絵美、齋藤陽介、広田淳一、コロ(柿喰う客)、平舘宏大、青木宏幸、梅澤裕介(梅棒)、鶴田祐也、田邊恵弥、新美要次、池亀三太、荒木昌代(ノーフューチャーズ)、板橋駿谷(掘出者)、松尾英太郎(劇団スパイスガーデン)、北島大獅(ビビプロ)、右手愛美トップコートエージェンシー)※舞香は降板