(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「セクシードライバー」劇団、江本純子 vol.1

立ち上げから3か月連続しての新作上演(しかも福岡での地方公演もあり)というのは、相当のエネルギーを要すると思しき劇団、江本純子。この苦行も次のステップを模索してのことだろうが、(vol.0に続く)2回目でいきなりのこの顔合わせ。反則だよなぁ、と思いつつ、久々の安藤玉恵を拝みに、頬を緩めて足を運ぶわたし。
タクシーに携帯を置き忘れたOLが、それを届けてくれた変人のタクシードライバーと交わす深夜の会話劇で、やりとりはやがて混沌とした世界に落ちていく。時間の経過とともに、ふたりの立ち話はドロ沼の様相を呈していくわけだが、しかし最後の最後まで日常からは逸脱はしないので、不条理劇を謳ってはいるものの、いわゆるそれではない。
社長の娘で、配車係をやってる女性に密かに思いを寄せるという運転手を、前田司郎が好演。想定範囲内の上手さだが、もしかして素では、と覗かせる一瞬もあって(あの卑屈で気弱な笑顔が最高)、愉快だ。
一方、短気なところはあるが、どこか生真面目で、実は人がいいOLを、安藤玉恵がさすがの貫禄で演じている。2年ぶりだけれども、ちっとも衰えてませんね、安藤さん。
さすがに引っぱっている感じは否めないが、わざとらしさより、ふたりの会話の行き着く先への興味で、最後まで連れて行かれた感じ。vol.0でも感じられたが、次作以降も、このちょっと強引なパワーに磨きをかけていってもらいたいものだ。(80分)

■データ
開場後たちまち立錐の余地がなくなった5時の回/渋谷ギャラリー LE DECO 4F
6・26〜6・28
作・演出/江本純子
出演/前田司郎(五反田団)、安藤玉恵